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そして僕らは最果てへ

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鱗。そう、まるで鱗だったのです。幾重にも重なるそれは窓から落ちてくる光を乱反射し、きらきらと不快な輝きを放っていました。

僕にはそれが美しいものとは到底思えるはずもなく、今すぐ引き剥がしてやりたいと思い手をかけました。
しかし、それは恐らく外部からつけられたものではなく、内部から直接生えてきたのでしょう、なかなか容易く剥がれるわけもなく、そのうえ剥がすにはかなりの痛みをともないました。

「無理に剥がしたら、肉まで一緒にとれてしまうよ」

僕の腕から滴り落ちる液体を彼はゆっくりと指で掬い上げました。その動作はまるで愛撫のようでしたが、僕はこんな醜い姿を見られたという羞恥心で彼の顔もまともにみられませんでした。

「針を使うのさ、」

どこから出してきたのでしょうか。彼の手には僕の小指ほどの長さの針が握られており、鱗とは違う鈍い輝きをもっていました。その針には針穴がなく、いったい何に使っていた針なのか、出るはずも無い答えを僕はぼんやりと考えていました。

針は、僕の一枚の鱗の下に音もなく滑り込み、彼が手首を少し捻ると鱗は飴細工が割れてしまうように容易く、実に容易く、剥がれ落ちてしまいました。

それは六月の雨のように気だるく、君は闘魚のような目で僕をなめるように見ていました。
気が狂うような時間に、僕の血は只、君の手を汚していくだけでした。


(雨と銀河)

070614
作品名:そして僕らは最果てへ 作家名:natu