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不思議な御簾(みす)

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むかしむかしある山里に、きーちゃんと呼ばれる女の子とその家族が住んでおりました。

家族は貧しくても、仲良く穏やかに暮らしておりました。

家族は毎年、お正月には必ず本家に行くことになっておりました。


その出来事は、キーちゃんがまだ幼い頃のお正月のある日に起きました。


その日、親戚の男の子が突然言いました。

「きーちゃん、これから2階へ子供たちだけで探検に行くよ」と。

本家は広い広いお家です。2階にもいくつものお部屋がありました。

それでも、きーちゃんはお姉さんも一緒だから、怖いことはないなと思い、2階へ上がることにしました。

子供たちはみんなで、大人が大事にしている一番大きなお部屋へ入りました。
 
その大広間の真ん中には、黒い大きな布が無造作にぺちゃんこになって置いてありました。

幼いキーちゃんにはその布は、編み目のようになっていて軽そうに見えました。

その時、親戚の男の子がまた言いました。

「キーちゃん、この布の中に入ってごらん。」

「みんなは入っちゃだめだよ、入れるのはキーちゃんだけなのだから。」

きーちゃんは少し怖かったけれど、立ったままでその布を被ってみました。



するとどうでしょう。

その布の中は不思議な空間になっていました。

中に入ったキーちゃんは、しばらくじっと立っていましたが、布で仕切られたその空間は、広い広い異次元のどこか遠くの空間にいるような気がしました。


と、その時どこからかかわいらしい男の子の声が聞こえてきました。

その声は、なんだかすごく懐かしい声です。けれど、親戚の男の子の声ではなく、またお友達の男の子の声でもありません。

もっともっと小さい頃に親しくしていたような、そんな懐かしい声でした。

その声は言いました。

「きーちゃん、こっちへおいで。」と。

きーちゃんは、その不思議な空間の中でどうやって声の方へ行くのかわかりませんでした。

それで大きな声で男の子に言いました。

「暗くてあなたが見えないよ。どうやって行けばいいの?」と。

男の子は言いました。

「よーく見てごらん。僕にはキーちゃんが見えるんだよ。」と。

きーちゃんは一生懸命目をこらして、暗闇の中を見つめました。

すると、斜め前の方に今まで見えなかったのに、お布団が見えました。

そして、その隣に同い年くらいの可愛い男の子が座っているのが見えました。

「あー、見えたよ。」きーちゃんは嬉しくなって思わず叫びました。

なんだかすごく会いたかった人に出会えたような、そんな気がしました。

きーちゃんはこれから何が起きるのだろうとふとそんなことも考えました。



その時でした。

今度は布の外側から親戚の男の子の声がしました。

「きーちゃん、出ておいで。」と。

心配そうなお姉さんの声もしました。

「きーちゃん、いるの?その布の中に?」と。

きーちゃんは、慌ててその布の中から出ました。

少し大人のお姉さんは何度もきーちゃんに聞きました。

「きーちゃんはあの布の中にいたの?」と。

布の中でずっと立っていたし、大きな声だって出したのに、何でそんなこと言うのかなときーちゃんは不思議に思いました。


困惑した顔のお姉さんは独り言を言いました。

「なんであの布はきーちゃんが中に入っているのにぺちゃんこだったの?

きーちゃんはどこに消えちゃっていたのかしら?」と。

幼いキーちゃんはそんなお姉さんの言葉を聞いて、布の中であったことは誰にも言わないことにしました。


その後、お正月のたびに本家へ行っても、もうあの黒い布はなくなっていました。

その布は「御簾(みす)」と呼ばれるものらしいです。



きーちゃんは大人になってから初めてわかったことがあります。

あの布の中で出会った男の子は、なんと、お見合いで結婚した今のパパだったということです。


あの不思議な黒い布(御簾)は大事な人に会える魔法の布だったのです。

お し ま い

作品名:不思議な御簾(みす) 作家名:シエラ