クルミの碁盤
たっこ君は村一番の頭の良い子で、幼い頃から大人が読むような難しい本を読んでいました。
そんなたっこ君の家ではどうしてなのか、本家のお墓が壊されるという事件が起きておりました。
一族の人たちはみんな困り果てておりました。
たっこ君も幼い心を痛めていました。
ある日、本家のおじいちゃんがたっこ君を家に呼び出しました。
そして、5歳のたっこ君に難しい囲碁を教え始めました。
たっこ君はその日から、無我夢中で囲碁を習いに本家に通うようになりました。
本家はお金持ちだったので、萱の木で出来た碁盤と桂の木で出来た碁盤がありました。
数年たって、たっこ君が小学生になる頃には、なんと、囲碁名人のおじいちゃんを負かしてしまいました。
その噂は村中に広がりました。
いえいえ、村中どころではありません、高句麗から、そして唐からもたっこ君と囲碁をしようと人々が集まりました。
けれどもみんな、たっこ君にはかないません。
みんな「ちくしょう」という汚い言葉をはいて去っていきました。
けれどもなかには、負けたことが悔しくて嫌がらせをする人もおりました。
本家のおじいちゃんは考えました。
そして、たっこ君のためにクルミの木で碁盤を作ることにしました。
それから、たっこ君はクルミの木の碁盤で囲碁対戦を始めました。
たっこ君に負けた人はクルミの実をもらって帰りました。
クルミの実はとても固い殻に入っていますが、中にはとても美味しくて体に良い実がぎっしり詰まっています。
クルミをもらった人たちは、なぜか負けても全然悔しくありません。
そして、いつのまにか嫌がらせをする人はいなくなっていきました。
本家のお墓もやがて壊されなくなったと言うことです。
しかしながら、平和に見える現在、たっこ君がすんでいた地方では、どのお店へ行っても碁盤が売っていないという事実があるようです。
お し ま い