金屏風と銀屏風
女の子はたいそう可愛らしいので村中の人から、なっちゃんと呼ばれて親しまれておりました。
なっちゃんはいつも、村にただ一つのお西のお寺で遊んでいました。
お坊さんもお寺のお嬢さんも、なっちゃんをそれはそれは大切に可愛がってくださっていたのでお爺さんは安堵しておりました。
なっちゃんは元気で明るく、そして皆に優しいとてもよい子に育っていきました。
ところがです。
寒い冬のある日のことでした。なっちゃんはなんと高熱を出してしまいました。
熱にうなされて苦しそうななっちゃんを、村中の人たちが心配しました。
けれども、お爺さんは何も動揺することもなく、なっちゃんを見つめていました。
そして、部屋の隅に置いてあった金の屏風と銀の屏風を持ち出してきました。
金と銀の屏風には、すばらしい字でお経が書かれてありました。
お爺さんは、なっちゃんが寝ているお布団の周りをその屏風で囲み始めました。
それから、いつもお世話になっているお寺のお坊さんを呼んできて、なっちゃんのそばに座ってもらいました。
お坊さんは、それからすぐになにやら念仏を唱え始めました。
長い長い念仏です。
だけど、高熱のあるなっちゃんにとっては何か心地の良い念仏でした。
何時間もの間、お経は読み続けられました。
するとどうでしょう。
なっちゃんの熱が少しずつ下がってくるではありませんか。
なっちゃんの病気のお顔は、だんだん元気を取り戻して、安らいだお顔に変わっていきました。
次の日、なっちゃんは何事もなかったように元気になりました。
村の人たちも、自分のことのようになっちゃんの回復を喜びました。
なっちゃんはそれからも何か病気になるたびに、その金と銀の屏風に守られました。
お し ま い
その金と銀の屏風も、なっちゃんが大人になった頃、家が火災になり、金屏風の方が燃えてしまいました。現在実家にあるのは銀の屏風だけです。