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藤原ヒロキ
藤原ヒロキ
novelistID. 32029
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お別れの缶コーヒー

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タイトル
2011/09/04
お別れの缶コーヒー

本文


大学を卒業した後、大学で知り合った色んな女に声をかけた。うまくいかなくてもその後顔を合わすことが ないのが都合がよかったからだ。
卒業後は、不景気と言われている中でも運よく就職しやすい時に就職活動ができたため、自分でも驚くくらい大きな出版社に面接を7回経て入社することができた。そしてそれをいいことに大学の同級生や後輩を食事に誘い、さも大したことがなさそうに自慢をしていたのである。

あの時もそうだった。

同じゼミにいた朝比奈由依の時だ。由依は大学を卒業後は実家の群馬に帰っていた。なんとかものにしてやろうと思い、『今度群馬に取材の用事があるから会おう』と声をかけた。由依に彼氏がいるかどいうか気にもしなかったが、あっさり会ってくれた。大学ではチアリーディング部に入っていて活発で愛嬌がありファンも多かったのを記憶している。大学時代のどうでもいい話をしながら近くのイオンのフードコートで中途半端に洒落たご飯を食べて、カラオケを終えた頃には23時になろうとしていた。
カラオケを出た後、さて、どうしようか、と考えていると、由依は『ちょっとまってて』と道の脇の方へ行って戻ってきた。その後、終電を逃そうととにかくどうでもいい笑い話をしながらゆっくり歩いて駅まで向かった。駅前に差し掛かった時、由依が急に無口になり、『これ』と差し出したものがあった。手には、俺が大学時代によく飲んでいた銘柄の缶コーヒーがあった。『本当によく喋るから渡すタイミング逃しちゃった。もう冷めちゃったよ』と大学時代からの愛嬌のある笑い顔で言った後、少し困ったように眉をさげて、『私、地元の人と結婚する事にしたんだ、体気をつけて仕事がんばってね』と言って缶コーヒーを差し出した。俺は『おめでとう』と後何か適当なことを言って別れた。終電に乗り込んで誰もいない車内でもらったコーヒーを一口飲んだ。飲み慣れた当たり障りのない味は、ぬるくなり、今の自分に最も相応しい味がした。
作品名:お別れの缶コーヒー 作家名:藤原ヒロキ