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軍人将棋の大好きなエロい女と、世界の果てを見に行こう

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小学生のランドセルに、カマドウマの死体を入れるバイトが終わった頃には、もう外はすっかり夕方になっていて、「あ、そろそろ帰らないと。薬の時間だ」と思ったのでとぼとぼと家に帰った。家の玄関の前では、新聞を売りたくて売りたくてたまらない勧誘の人々30人が列を成して並んでいたのだけれど、いつものことなので、無視して家に入る。相変わらず家の中は、おっさんでいっぱいだ。軍人将棋を楽しむおっさん、加藤紀子のテレフォンカードを眺めてニヤニヤするおっさん、オチンチンを「弱」にしてある扇風機に擦り付けて静かに目をつむるおっさん、オリジナル組体操を発案するおっさんなど、総勢200名ほどのおっさんが、この1DKの部屋にぎっしりと詰まっている。僕は、サボテンに話しかけているおっさん、通称くらもっさんに「ただいま」と、ポルトガル語でつぶやくと、くらもっさんは「お帰り!ねえ聞いて!きょうのテレフォンショッキングで、岸辺一徳がバク転したんだよ!しかも30分みっしりと!汗だくで!」と手話で返してきたので、「そうなんだ!すごいね」と言う顔をして、ソファに座った。ソファの両脇では、小堺一機のコスプレをしたおっさん15人が、ビートルズを歌っている。

 「いえすたで~、なんやかんやほら、いえすたで~」

 面白くもなんともない替え歌をしている中年を見て僕は、胃の中で平野レミが大声で叫んでいるような感覚に陥ったので、おっさん15人にスタンガンを当てた。おっさん15人は

「う」と一声ずつあげて眠りについた。

 「そうだった。薬を飲みに帰ってきたんだった」

 思い出した僕は、顔中ホクロだらけのおっさん、後藤さんを呼び出し、肛門を開かせた。後藤さんは、「恥ずかしいから、やめて下さいよ~。こんな私にも、妻一人、娘一人いるんですからぁ~」とホホを染めながらいった。後藤さんのピンクの肛門を開き、肛門に口を近づけて、歴代仮面ライダーの名前を唱えると、後藤さんの肛門から、ポロポロポロと、ピンクの錠剤が出てきた。僕は、薬をいつもここに隠してあるのだ。

 「もう~。茶だんすとかにしまってくださいよぉ~。茶だんすとかにぃ~」と後藤さんは、ヒョードルのモノマネをしながら言っていたが、僕の耳には届いておらず、僕は、コーンポタージュで薬を流し込んだ。この薬がないと僕は生きていけないのだ。薬が体中に効いてくるのがわかる。僕は、落ち着くために、ペットの金魚をを焼いた。直火で。この金魚は、そういえば仲良しだったおばあちゃんと買いに行った想い出の品だ。想い出の金魚は、30秒程でいとも簡単に真っ黒になった。

 この真っ黒になった金魚は、隣に住んでいる田所さんの集合ポストに入れておこう。今日でちょうど、45匹目になるなあ。

 すぐ近くの女子大に通っている田所さんは、真っ黒な金魚が集合ポストに入っている度、大きな声を出して大家さんの部屋へと駆け込んでいく。大家さんは「真っ黒い金魚は珍しいねえ!それはそうと、一発ヤラせて!家賃半額でいいから!」と白目で、田所さんに言い寄るのである。なかなかアクティブな大正生まれがいるものだ。

 真っ黒の金魚を、集合ポストに入れようと、マンションの階段を下りると、真っ青な顔をしたキノコじじいが立っていた。キノコじじいは、中学時代のジャージを着て生のキノコをぽりぽりかじっているじじいで、いっつも小学生に金属バットで殴られるので、生傷が絶えない。本日もいつも通りアザだらけのすねをさすりながら、ぽりぽりぽりと生のキノコをかじっている。

 「こんにちは、きょうもかじってるね、キノコ」

 「・・・、そうなんだ。おいしいよ、生のキノコ。ホラ、君も食べてみな。この紫のやつ」

 そういってキノコじじいは、ポケットから紫のキノコを僕に渡した。僕は、お母さんから、「社会的価値のない人から物をもらってはいけません」、と言われていたので、「早く職をみつけてください」と丁寧にお断りし、木製バットで殴った。キノコじじいのこめかみからは、紫の汁がたれた。僕は、なんだか笑えてきたので、鼻につめていたシゲキックスをフンッと取り出し、はは、と笑った。しかし、次の瞬間、僕の体に異変が起きた。何と、僕の体の半分が、子供向きテレビ番組で見るヒーローのようなものに変化したのである。言うなれば、皮膚が、カラーの全身タイツみたいな素材になったのだ。僕は動揺し、ついついいつもの癖で都々逸を歌ってしまった・・・  (第二話につづく)