音楽レビュー
ROYAL HUNT『Clown in the Mirror』
ROYAL HUNTは積極的な孤独を歌い上げているバンドである。孤独というと、なにがしかのものが欠落していると考えられることが多いかもしれないが、彼らの孤独は欠落ではなく、むしろ何もない所に新しいものを作り出していくことなのである。だから彼らは積極的に欠落を作り出す一方、積極的に欠落を埋めていく。受動的に欠落を悲しむのではない。主体的に何者にも依存せず状況と関わっていくというところに彼らの孤独はある。
彼らの楽曲が美しく切実で豪華なのは、ひとえにそのような美学に貫かれているからだと思われる。規範を受動的に受け入れるのではなく、自らを規範とすること、そこから開けていく多様な行為的広がりが、彼らの曲の豪華さを生んでいるのだろう。また、そのように自らのみを根拠とする切実さが彼らのメロディーには反映している。さらに、彼らは自信を持ちぎりぎりの所で自分を愛し、自らの美学をつらぬこうとしているので、このような美しい楽曲が生まれるのだろうと思う。
だからROYLA HUNTの精神はDIYとは微妙に異なる。パンク的な粗野さというよりは、同じくパンク的な精神を持ちながらもそこに美学的・倫理的な高潔さが付け加わっているのである。何もかも破壊しつくすのではなく、何か新しいルールを整合的に作っていこうという清潔な意図があるように思われる。