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音楽レビュー

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Bush『sixteen stone』


 Bushを聴いていて思うのは、「これは単なる垂れ流しだろ」ということである。コンプレックスとルサンチマンで攻撃性を持て余していても、自ら行動を成そうとしたり、他者と倫理的に関わりあって行こうという気持ちがないので、自己完結で終わってしまっている。彼らの音楽はそもそも存在すらしていないのではないかという気になる。なぜなら、彼らは自分たちの音楽の存在を証明するという「行為」を成そうとはしないし、自分たちの音楽が存在すべきという倫理的な働きかけもなそうとはしないからである。彼らは孤独ですらない。孤独は連帯の存在を前提として初めて成立するのである。連帯のやり方もまともに分かっていない彼らは孤独にすらなれないのである。
 だがそのような存在未満の垂れ流しを、同様に存在未満の人たちと共有できてしまうのだから音楽の力は偉大だと言わなければならない。お互いに承認し合うこともなく、お互いに交渉し合う訳でもなく、ただ音楽を共有するということ。その旋律とリズムとリリックによって、存在未満の人たちが存在未満の共鳴を起し始めるということ。音楽はこのように他者や社会の意識のない人間にとってこそ重要な生存のツールなのである。そのような人たちはただ漠然と、自らを証し立てることもなく他者と呼応することもなく、ただ音楽をだらしなく聴く。その弛緩しきった姿勢において、証明や倫理といった気負いを要せずとも一定の「気分」を共有し合うのである。Bushの音楽は存在というよりは気分である。行為や倫理がなくとも同じ場所で呼吸できる空気のようなものを作り出す、音楽のそういう側面でもって、辛うじて非存在以上存在未満の場所にとどまらせてもらっているのである。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte