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音楽レビュー

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藍坊主『ノクティルカ』


 藍坊主の音楽は勢いに満ちている。だが、勢いに満ちてはいてもポップではない。テンションが高くてもそれがキャッチーなサビになることを回避しているかのようだ。これは、彼らが正統なロックバンドであることの証だと思われる。
 ポップスが間主観性の音楽だとしたら、ロックは、間主観性のぬるま湯からどこか溢れ出す音楽だということになる。ロックは間主観性の圧力に均されることがなく、それでも自分たちの固有性を普遍性にまで高めようとするのである。藍坊主の音楽に感じるのは、まさに、間主観性から溢れだしていく固有性、というものだ。それはヴォーカルの過剰な声量、曲の過剰なテンション、そして歌詞の内容の青臭さにも表れている。
 社会には社会の法則がある。それは個人の意志ではつかみきれず、個人の意志からは外れたところに集合的に成立してしまう神の見えざる手の創造物である。その社会の法則にうまく乗っていくのがポップスであるとすれば、藍坊主の音楽は、個人の意志から外れてしまった社会の法則を拒否し、なおも個人の意志にその拠点を置くという極めてロックな姿勢なのである。例えば「ホタル」では、大人の世界にどこか違和感を感じている若者の心情がうたわれるが、その大人の世界という間主観性の舞台から溢れるところに彼らの魅力があるのだ。

作品名:音楽レビュー 作家名:Beamte