表と裏の狭間には 十七話―二度目の夏―
「あぁ………、すまない………ね。」
「いいのよ。寝てなさい。食べさせてあげるから。」
お盆を机に置いてから、蓮華を半ば無理やり寝かせる。
あー………。汗びっしょりね。
あとで拭いてあげないとね。
とりあえず、お粥を食べさせないと。
「ほら、口を開けなさい。そこそこ冷めてるから、普通に食べられるはずよ。」
「すまない………。」
恥ずかしいのか、顔を赤くしながら口を開ける蓮華。
正直言って、かなり可愛い。
だって、普段あんなに溌剌としていて、ボーイッシュと表現しうる蓮華が、こんなに弱々しくなって、頬を染めて他の人にご飯を食べさせてもらっている図。
っと。待てあたし。
なんかあたしの評価が著しく低下している気がする。
「本当にすまない………。」
「あんた、さっきから謝ってばっかりよ。家族が風邪をひいたら面倒を見るのは当たり前よ。」
「本当に………。あの野郎のことでも、相談に乗ってもらって……。」
「気にしないでいいわよ。ほら、食べなさい。あたしの特製粥よ。」
「ああ………。」
蓮華は、黙々と粥を食べる。
「そうだ………。紫苑は、まだ戻らないのか?」
「ええ………。」
「そうか………。」
蓮華の容態は悪化する一方。
これは、もう話してやったほうがいいのかな。
免疫力は、心的状態も関係していると言うし………。
「蓮華。紫苑は今、あなたの親戚のところに言ってるのよ。」
「………はぁ!?それ、どういう………ッ!」
驚きのあまり怒鳴り、そして咳き込んでしまう。
「紫苑には今、あなたの陥っている事態の解決を頼んでいるのよ。」
「…………なッ!?」
「あたしが話したのよ。そして、紫苑はあなたのために、向こうへ向かったのよ。」
「…………紫苑。」
「そして、もう解決したみたいよ。蓮華の親戚は、もう、蓮華には関わらないと言ったそうよ。」
「本…………当に?」
「ええ。だから安心しなさい。この台風が抜けたら、紫苑もこっちに飛んで戻ってくるわ。だから、あなたも風邪をさっさと治して、元気になって紫苑を迎えなさい。」
「…………ああ。……………ああ!」
そして、蓮華は、無理やりだが、笑顔を浮かべた。
「だから、さっさと飯を食いなさい。」
今日の話はこれでおしまいだ。
このあと、紫苑が帰ってきて、蓮華は色々怒鳴ったり泣いたり、大忙しだったのだが。
その蜜月をあたしが書くと、二人の名誉に関わるからね。
さあ。今夜はパーティーだ。
蓮華の全快祝いと、その他諸々を含めた、ね。
続く
作品名:表と裏の狭間には 十七話―二度目の夏― 作家名:零崎