衝動
たぶんこうだ。ボーッとしてる。頭の中が整理しきれない。いろんな情報がかすめていく。
絵と音の洪水の中にいる。それを眺めながら、そんな自分を見ているもう一人の自分がいる。
抑えきれない衝動がある。
死にたい。
だけど、それでは駄目だと止める、もう一人の自分。客観的に見て意見してくる。こいつと付き合いだしてどれくらい経つだろう。
洪水の中から出てみる。そうだ、タバコでも吸おう。そうしたら落ち着けるかもしれない。タバコを吸いにフラリと外に出る。外は雨だ。憂鬱になってきた。
さぁ吸おう。
考えてみる。今の自分を、状態を、状況を。
吸う。吐く。
なんの気力も湧かない。足を伸ばしてみる。相変わらず無気力。
死にたい。
駄目だというアイツ。だが外は雨だ。誰が言ったんだっけ? 雨の日は自殺者が増えるって。
とりあえず一本吸ったところで部屋に戻る。戻ったところで何も変わらず、ボーッとしている。頭が鈍い。頭を振ってみる。はっきりしない。何をしていいのか分からない。
音楽でも聴けばというアイツ。
そうか、目からの情報はとりあえず遮断できる。ロックを一枚選んでかけてみる。なんとか一本、道が見えてきた気がする。それが明るいか暗いかは分からないが、集中力は取り戻せた。聴いているうちに気に食わない曲が多くなって、飛ばしてばかりになった。
また落ち込む。
次のを試す。やっぱりロックを選ぶ。ヒーリング系の方がリラックスできるかもしれないが、今求めているのはリラックスじゃない。一本の道なんだ。拓けた先の世界が欲しい。今のままじゃいけないからというアイツ。
その通りだ。
打ち破る力が欲しい。次の自分に進むための、歩いていくための。
今度のCDはいい。光が見えてきた。頭も冴え始めた。手にも足にも力が入る。さぁどうしようか。とがっていた神経がようやく落ち着いてきたようだ。そんなところでCDが終わった。さて困った。またふわふわしてきた。新しい次元に入ったのか、元に戻ったのか。
考えてみる。
頭は冴えてる。雑音は入ってこない。聞こえるのは雨の音。
大丈夫だというアイツ。
タバコを吸いに出る。足取りはしっかりしている。物事を考えるコトはできないが、何か吹っ切れた。死にたいとは思わない。なんでもできる気がしてきた。
もう大丈夫だというアイツ。
その通りだ。
でもなんの気力も湧かない。またボーッとしてきた。なんだろう。もう大丈夫と言ったじゃないか。それは自殺についてだけの言葉だったようだ。
またアドバイスをくれ。何をしていいか分からない。眠りたいとも思わない。