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飛鳥川 葵
飛鳥川 葵
novelistID. 31338
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衝動

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「今の気分は?」
 たぶんこうだ。ボーッとしてる。頭の中が整理しきれない。いろんな情報がかすめていく。
 絵と音の洪水の中にいる。それを眺めながら、そんな自分を見ているもう一人の自分がいる。
 抑えきれない衝動がある。
 死にたい。
 だけど、それでは駄目だと止める、もう一人の自分。客観的に見て意見してくる。こいつと付き合いだしてどれくらい経つだろう。
 洪水の中から出てみる。そうだ、タバコでも吸おう。そうしたら落ち着けるかもしれない。タバコを吸いにフラリと外に出る。外は雨だ。憂鬱になってきた。
 さぁ吸おう。
 考えてみる。今の自分を、状態を、状況を。
 吸う。吐く。
 なんの気力も湧かない。足を伸ばしてみる。相変わらず無気力。
 死にたい。
 駄目だというアイツ。だが外は雨だ。誰が言ったんだっけ? 雨の日は自殺者が増えるって。
 とりあえず一本吸ったところで部屋に戻る。戻ったところで何も変わらず、ボーッとしている。頭が鈍い。頭を振ってみる。はっきりしない。何をしていいのか分からない。
 音楽でも聴けばというアイツ。
 そうか、目からの情報はとりあえず遮断できる。ロックを一枚選んでかけてみる。なんとか一本、道が見えてきた気がする。それが明るいか暗いかは分からないが、集中力は取り戻せた。聴いているうちに気に食わない曲が多くなって、飛ばしてばかりになった。
 また落ち込む。
 次のを試す。やっぱりロックを選ぶ。ヒーリング系の方がリラックスできるかもしれないが、今求めているのはリラックスじゃない。一本の道なんだ。拓けた先の世界が欲しい。今のままじゃいけないからというアイツ。
 その通りだ。
 打ち破る力が欲しい。次の自分に進むための、歩いていくための。
 今度のCDはいい。光が見えてきた。頭も冴え始めた。手にも足にも力が入る。さぁどうしようか。とがっていた神経がようやく落ち着いてきたようだ。そんなところでCDが終わった。さて困った。またふわふわしてきた。新しい次元に入ったのか、元に戻ったのか。
 考えてみる。
 頭は冴えてる。雑音は入ってこない。聞こえるのは雨の音。
 大丈夫だというアイツ。
 タバコを吸いに出る。足取りはしっかりしている。物事を考えるコトはできないが、何か吹っ切れた。死にたいとは思わない。なんでもできる気がしてきた。
 もう大丈夫だというアイツ。
 その通りだ。
 でもなんの気力も湧かない。またボーッとしてきた。なんだろう。もう大丈夫と言ったじゃないか。それは自殺についてだけの言葉だったようだ。
 またアドバイスをくれ。何をしていいか分からない。眠りたいとも思わない。
作品名:衝動 作家名:飛鳥川 葵