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【aria二次】その、希望への路は

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2.語り合う先輩たち



 サン・マルコ広場にあるカフェ・フロリアンを訪ねた灯里は、ゴンドラ協会の会合が行われる一室に案内された。
「灯里、遅い!」
 彼女の姿を、目ざとく見つけた藍華が声を掛けてくる。
「藍華ちゃん、ひさしぶり!」
 明るい笑みで灯里が応える。プリマになってからは、修行時代のように頻繁に合えない友達と出会えた嬉しさを押さえきれないようだ。近況を報告しあった後に、ふ と、あたりを見回しながら灯里が尋ねた。
「あれ? アリスちゃんは?」
「それがねぇ」表情を曇らせながら、藍華が答える。「マンホーム(地球)の偉いさんの視察旅行があるとかで、昨日いきなりアリスちゃんに担当割り振ったらしいのよね、オレンジぷらねっとが」

 それを聞いた灯里も残念そうな顔になる。が、気を取り直して、再び尋ねた。
「あ、それじゃあ、アテナさんは?」
 後ろから ぬっ と顔を出して来た晃が、灯里に答えようとする藍華を遮るように、口を挟む。
「アテナはなぁ、今日は一ヶ月ぶりのオフ日なんだそうだ」
 口を尖らせるその表情からは、同じ街で働きながら、滅多に逢えない友達と同席できなかった寂しさがにじみ出ていた。というか、ちょっと拗ねているようにも見える。ちょっぴりからかって、藍華と二人がかりで慰めにかかる。すると「すわっ! 私は拗ねてなんかいないぞ!」と晃は軽く怒って見せた。ひとしきりはしゃいだ後で、晃が真顔になって尋ねてきた。

「そういえば、アイちゃん、そろそろ昇格試験だろ?」
「えぇ。でも、アイちゃんって上手なんだけど、漕ぎ方がちょっと硬いっていうか」
「コリャ、灯里っ!」
 少し表情を曇らせた灯里に、藍華がツッ込んだ。
「あんたみたいに、操船中に知り合い見つけては、見境無しに声掛けないから、漕ぎ方が硬い、なんて言ってるんじゃないでしょうねっ!」
 アイは、藍華や晃、更にはアリスとアテナとも顔見知りだった。だから、直接の先輩である灯里と同じように、アイのことを気にかけている。いや、もしかしたら普段顔をあわせていない分、灯里以上に気にかけているかもしれない。
「ええーっ、そんな事考えてないよぉ」
 アイの漕ぎ方にある、ごく僅かな違和感。それが何なのかを、灯里自身も明確に掴みきれていなかった。そのせいか、藍華への反論は弱気なものになる。

「厳しく問題点を指摘してあげた方が、アイちゃんのためかもしれないな」
 そんな灯里に、真面目な顔で晃が語る。だが、灯里は柔らかく微笑みながら、その助言を断った。
「確かに、その通りかもしれません。でも『こんな風にすればいい』って教えて上げられないのに、問題点だけを厳しく指摘するだなんてこと、私にはできません」
 一息ついで、灯里は言葉を続けた。
「もし、私の指導が至らなくて、アイちゃんが何か失敗しちゃったら、それは先輩である私の責任です。だから、万一失敗しても叱ったりせずに、アイちゃんと一緒にその事を受け止めるつもりなんです」
 一見、無責任な放任主義とも取れる言葉だったが、灯里の態度からは、深い覚悟が見て取れた。晃は、それ以上言葉を挟むことなく、黙って紅茶で喉を潤す。自分の助言が拒否されたのにも関わらず、妙に満足げな笑みが、彼女の横顔には浮かんでいた。

「うふふ、灯里ちゃんも先輩らしくなってきたわね」
 背後から聞こえた声に、思わず振り向く。そこに居たアリシアとグランマの姿に、灯里は笑みをますます輝かせた。
 アリシアとグランマがスーツ姿なのは、現役のウンディーネを引退し、ゴンドラ協会のスタッフとなっているからだ。そんなアリシアに対して未だ憧憬の想いを抱いている藍華がはしゃぐ。晃も嬉しげに笑顔を見せた。
「みんな、すぐに偉くなっていくのよねぇ」
 しみじみと語るグランマに、えらくなんかないですよ、と、灯里があわてて否定する。
 ひとしきり賑やかに語らった後で、グランマが気分を変えるように言う。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか」
 その言葉に、思い思いに歓談に興じていた、他のプリマたちも席に付いた。