漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編)
十一の六 【虹】
【虹】、「虫」と「工」の組み合わせ。
「工」は上部に反る工具のこと。そして、「虫」は爬虫類の形。したがって【虹】は、にじに棲む反り返る龍のことだとか。
そんな【虹】、ゲーテは言った。
「虹だって十五分続いたら、人はもう見向かない」と。
確かにと思うが、なんと情緒のないことか。
その点、インディアンは違う。
作者不詳だが、有名な詩がある。それは「虹の橋」。先立って逝ったペットたちへの思いなのだ。
亡くなったペットは、虹の橋のたもとにある楽園に行き、飼い主をずっと待っている。
飼い主がこの世を去った日に再会する。
かってのペットが全力で駆けて来てくれて、顔中に一杯キスしてくれると言う。
そして一緒に虹の橋を渡って、天国へと行くのだ。
そう言えば、もう一度逢いたい昔のペットたちがいる。
もっと散歩に連れて行ってやれば良かった。
もっと美味しいものを食べさせてやれば良かった。
まず謝らなければならないのかも知れない。
だが、いつか一緒に【虹】の橋を渡って行きたいものだ。
それまで待っていてくれるか、ちょっと自信はないが…。
作品名:漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編) 作家名:鮎風 遊