漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編)
四の一 【微】
【微】、(かすか)と訓読みし、「わずか」なこと。
その意味は、細い糸の端のように目立たない…ということらしい。
しかし、どの程度のものかがわからない。
だが、小さな数字として、【微】は一〇〇万分の一のこと。ほとんどないに等しい。
笑いにも微かなスマイルがある。それはモナリザの微笑。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、その一〇〇万分の一の微笑みをスフマートという技法で描いた。
その口元辺りに輪郭を作らず、透明色で何度も何度も微かずつ上塗りをし、一〇〇万ドルの微笑を創り出したとされている。
そして、その微笑を万人に贈るために、左右の瞳の見つめる方向を違えた。
これにより、どこから見てもモナリザは、自分だけを見つめて微笑んでくれているのだと錯覚に陥る。
そして御愛嬌にも…左目頭に吹き出物まで作って。
ナポレオンは浴室にモナリザを飾っていた。うっとりとしながらシャンプーしてたら、あっと手が滑り、泡が飛んだ。
吹き出物はそのシミだとか。
ナポレオンよ、お前はバカかと叫びたくもなるが、今のモナリザは、つまりレオナルド・ダ・ヴィンチとナポレオンの合作ということかな?
そんなモナリザ、たった一〇〇万分の一の微笑みと、
プラス…吹き出物で、
今でも万人に、永遠の微笑を贈ってくれているのだ。
作品名:漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編) 作家名:鮎風 遊