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漢字一文字の旅  第一巻(第1編より第18編)

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三の三  【湖】


【湖】、それは「さんずい」に「胡」の組み合わせ。
「胡」は「おおう」と言う意味があるとか。そのため、水でおおわられた所、そこが【湖】となる。

日本には、楽器の琵琶の形をし、水におおわれた所がある。それが琵琶湖だ。
この湖、なかなか大したもので、一〇万年以上存在し続けてきた古代湖の分類に入る。世界に二〇ほどしかなく、その兄弟にはバイカル湖や、モンゴルの青い真珠のフブスグル湖がある。

そんな古代湖の中でも最もミステリアスな湖、それは南極大陸にあるボストーク湖だ。
琵琶湖の二〇倍以上の大きさで、氷床から四、〇〇〇メートル下に静かに眠っている。
水温は氷点下三度、それでも氷らずに液体のまま。湖を被(おお)う氷の圧力と地熱で、氷点下でも氷らないそうだ。

現代人の祖先の新人類が誕生したのが約四〇万年前。この湖はそれ以上に、五〇万年以前から氷で被われ、氷底深く眠り続けてきたと言われている。
したがって、未だ人類は誰一人として、その湖畔のほとりに立ったことがない…ということになる。

こんな【湖】という漢字、まことに神秘な世界へと誘(いざな)ってくれるものなのだ。