漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編)
二の四 【波】
【波】、それは空間や物体に加えられた状態の変化が、次々に周囲にある速さをもって伝わっていく現象を言うとか。
砂浜に立つと水平線の彼方より途切れることなく、【波】が押し寄せてくる。
さざ波のような小さな波もあるが、津波のような大きな波もある。
しかし、世の中には目には見えない【波】もある。音波、電磁波、光波の類で、人の生活に活用されている。
そんな様々ある波の中で、一番やっかいでなんともならない【波】がある。
それは…『年波』。
音も立てずにひたひたと、しかし確実に。
人は感じずに、この波を被り続けて行き、不幸にも…、ある日ふと気付くのだ。
新聞の活字がはっきりと読めな〜い!
オシッコのキレが悪くなったー!
そして、吐く言葉は一言…「なんでだろ?」
日常会話、それはいつの間にか、アレ/コレ/ソレの三大指示代名詞だけで、事を済ませてしまう。ほとんど何が言いたいのかわからない。だが心配無用、ツレアイだけはわかってくれるから…と自虐的に、互いに慰め合う。
そして人たちは、この状態を自覚した時に、必ず呟くのだ。
「やっぱり、寄る『年波』には勝てないなあ」と。
まことに、こんな『年波』を上手く乗りこなして行けるサーフボード、どこかに売ってないものだろうか?
作品名:漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編) 作家名:鮎風 遊