漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編)
十七の六 【則】
【則】、かって重要な契約事項を祭器に刻み保存した。それを守るべき【則】(のり、おきて)としたとか。
そして現代で言えば、社会的な規則だ。法律から始まり、実にいろいろな【則】がある。
また、それが地方によって微妙に異なってくるから、やっかいだ。
最も代表的な規則、つまり暗黙のルールがエスカレーターの乗り方。東京地区は、急がない人たちは見事に左側に並んで昇っていく。その統制取れた形はまことに美しい。
だが、もしそのルールを知らずに右に立っていれば、お前はそれでも人間かと睨まれる。
しかし、これが大阪に行けば、みんな右に立つ。東京と丸っきり反対なのだ。
そして、時々…、それを知っての内で、ちょっと恐そうなお兄さんが通路をふさぐ。
いずれもまことに厄介なことだ。
で、ここで一つクエスチョンを。
エスカレーターの乗り方、京都の場合は一体どういう【規】(ルール)となってるのでしょうか?
答は、実に簡潔明瞭…。
とにかく『前の人に従う』だ。
前の人がエスカレーターの左にいたら、左に。右にいたら右に並ぶ。すべては前の人次第が常識となっている。
これが割に気楽で、すべては出たとこ勝負。
ここは東京、だから左に、あるいはここは大阪、だから右にと心構える必要なし。すべては前の人次第。
ならば、自分が先頭に立ってエレベーターに乗った時、どちらに立つべきなのだろうか?
ええおとこはんが、そないなことに、きばらんと…。好きにしやはったら、よろしおすえ…と、アホにされるのがオチかも。
とにかく【規】、地方によって様々のようだ。
作品名:漢字一文字の旅 第一巻(第1編より第18編) 作家名:鮎風 遊