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零時前のヒール

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おまけ4 池袋にて



 運び屋に『お前にも人の心があったんだな!!!!!』とやけに感激されながらいつもと比べると破格の値段で土産の配達を任せたその日。
 折原臨也はむすっとした顔で仕事机を見ていた。
 彼の机の上には大きな土産袋と、それに比べたらとても小さな土産袋が一つずつ置いてある。
 彼はその二つを仁王立ちでじぃ……と並べたのち、観念したようにため息をついて脇に置いていた携帯電話を手に取った。

「もしもし、俺だけど。……実の兄を俺俺詐欺呼ばわりとは。嘆かわしい。ああうんそうだね確かに俺からかけるのは珍しいものねうるさい少し黙れ。
 それで、実は俺ここ三週間ぐらい留守にしてたんだけれどさぁ、実は旅行にいってたんだけど。……あぁ、勿論用意してるに決まってるだろ、優しい兄だろ? いいかげんその優しい兄のいう事を聞いてその中二病を少しは治して…………そういうと思ったよ。
 それで、どこにいったと思う? ………………え、お前ら今どこいんの、…………やぁ新羅、何やってるんだい外で。引きこもりの君が珍しい。……天変地異なんて失礼だなあ、ハハ、その降ってくる槍に刺されろよ。はいはい、運び屋にも同じようなことさんざん言われたよ。……どういたしまして。
 ……あぁそうだよ、いってきたんだよシュテルンビルトに。うるさい愛の逃避行いうな誰とやるんだ。……あの人は、関係ないだろ。……ああもうそんなこといってるとやんないからな土産。…………何って、…………スカイハイのグッズ。
 ああもううるさい叫ぶなだから嫌だったんだよやっぱり家に放っておけばよかった! だってお前らと運び屋合わせたらまたなんか面倒なことになるだろ! ……あーわかったわかった、今から池袋にいくから! ……いくけど、絶対途中でシズちゃん見たら連絡しろよ。逐一。頼むから。
 ……うん、割れ物の可能性を考えてくれるなんてお前たちの成長が感じられて嬉しいよ俺は。じゃ、そこから動くなとはいわないけど絶対に変なマネはするな、わかった? ……じゃあ池袋で」

 携帯電話を切り、先程より二割疲れた顔でハァとため息をつくと、臨也は大きな袋を漁って中から中ぐらいの袋を二つ出すと、ものすごく嫌そうな顔で大きな袋の隣に置いてあった小さな袋を見た。
 そして、先程電話したときより更に長くそのまま固まっていると先程より長く深い溜息を吐いて、また携帯電話を手に取り、もう一度溜息を吐くと短縮ボタンを押して相手が出る前に叫んだ。


「旧スーツワイルドタイガーが欲しいなら歩いて俺の部屋に来てそれでドアの前で死んで!!!」


 そして相手が返事をする前に電話を、そして電源すらも切って、中ぐらいの袋二つと小さい袋一つ、三つの袋を抱えて部屋から飛び出した。


 その後、携帯を留守番電話にしていてメッセージを聞いていなかった借金取りが、妹たちといつもに比べたら大分仲睦まじく歩いていた情報屋に遭遇し、自販機を投げつけようとしてナイフと共に小さなお土産用袋を投げつけられるのは、また別のお話。

作品名:零時前のヒール 作家名:草葉恭狸