うつくしい夜に
「良い夜だね」
はっと見上げるより早く横に飛び降りて血塗れの剣が掠めるより先に肩を掴み倒す。
鈍い音と伝わる衝撃。ああ、背中打った?
謝罪する気はさらさらなく、相手の眼をまっすぐに上から捕らえてまずはご挨拶。
「こんばんは」
返ってきたのは獣の眼だった。
音がする程ぎりぎりと睨まれて痛いくらいに射抜かれる。
やばいな、血と心臓がどくどく鳴り出したよ。
掴み出してこいつにも見せてやろうか。
ああ、銀には赤も映えそうだ。
考えたことが自分で気に入って笑ったら、組み敷いた相手が呪いの言葉を吐いた。