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開けたら閉めろ

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さすがの俺もキレた。1年半ほど同棲している彼女がいるんだが、こいつがまた中途半端の権化のような女で、やることなすこと何でもやりっぱなし。特に目立つのが開けっ放しグセだ。トイレのドア、冷蔵庫の扉、マジックペンのキャップなんてのはまだ良い方で、今回はマヨネーズのフタがキチンと閉まっていなかった。

 これまであまりその悪癖に強く抗議することはなかった。しかし、今回ばかりは許せん。俺はマヨラーなのだ。マヨネーズは酸化に弱いんだぞ。風味を損なうような事態が起きたらどうしてくれる。生来の几帳面さも相まって怒りは頂点に達していた。

「おいコラァ!!」
 口を開けたまま寝ていた彼女をたたき起こす。口も開けたら閉めろ。
「お前、マヨネーズのフタ開けっ放しにしたろ。あと冷蔵庫の扉もちゃんと閉まってなかった!」
 彼女はなんともウザそうに目をこすり、むくり、と起き上がった。
「はぁ~?」
 心底どうでもよさそうな返答。頭にくる。
「俺いつも! 開けたら閉めろって! いってるよね!?」

 そんなどうでもいいことで私の睡眠を邪魔したのか、そう食って掛かってくる彼女。お伝えできないほどの罵詈雑言の応酬が始まった。
 男の脳ミソは口論中でも別のことを考えられるように出来ている。ああ、こいつともオシマイなのか、とか。思えば結構長い付き合いだったな、とか。そんな事を考えているうちに、破局が訪れた。

 つい、手が出てしまっていた。
「もう出てく!」
 という声に、
「おう、出てけや!」
 と、売り言葉に買い言葉を実行してしまい、俺たちの1年半の同棲生活にピリオドが打たれた。
 玄関から バンッ という大きな音がして、彼女は出ていった。

 どれくらい時間が経ったろうか。実のところ結構ショックだった。結構長い付き合いだったんだ。まだ俺は未練がましく寝室で佇んでいた。しばらくして、彼女を追うようにノロノロと玄関まで歩いて行くと、玄関が開けっ放しになっていた。
 「開けたら閉めろよ……」
作品名:開けたら閉めろ 作家名:34542342