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ハニィレモン・フレーバー

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「なあ、クレイジー」
「んー」
本格的に眠そうな声で返事が返ってきた。
「おまえ、俺のどこがいいんだ」
贔屓目に見ても、外見は外国の血が混じっているディジーの方がいい。
そしてこちらは勤労学生、ついでにかなり変わった彼女もいる。
どんなに振り返っても、頭のネジがぶっ飛んだ奴に好かれる要素はないように思われる。

胸元でディジーは吐息のような声を零す。
それが少しくすぐったい。
「おまえ、オレが可笑しいってことわかってんだろう。いきなり部屋には不法侵入するし、付き合ってもねえのにキスしてくるし、それ以上も付き合わせるしな。おまえよくオレの行動に付き合ってくれているよ、本当」
「振り返って一人で納得しないでくれるか」
「だったらオレを正当な方法で判断しようとするな。それこそ無意味だ」

いつの間にか手には、ナイフが煌めいていた。肌に滑らせれば、あっけなく血が噴き出しそうな程鋭利な切っ先。
凶器を手にしているディジーを見ても、透は慌てることはない。こちらに向けられることがないと知っているから。
僅かに目を細めたディジーはつまらなそうに息を吐いたあと、ナイフを直す。どこに直したかまでは見えなかった。
触れるだけのキスが落とされる。透はいつも思う。あんまり口にするのは止めて欲しいのだが、相手はその要望を受け入れてくる様子がない。

ディジーは髪を掻きあげて、後ろに倒れた。一人用のベッドがひどく軋んだ。
「おまえはオレを愛さない」
ナイフを扱うにはしてはすらりとして美しい指先を唇に添えた後で、ある意味甘い青年に送る。
「そこがイイかな」
「意味がわからない」
心底理解できないといった態で眉を寄せた透に、ディジーは笑った。笑い続けた。




作品名:ハニィレモン・フレーバー 作家名:ヨル