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キツネ目をつかまえろ

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キツネ目をつかまえろ



「本当に下手なんです。こんな程度では全然だめだと、いつも思います。今度こそまともなものを描こうと、そういう欲求不満のような想いが絵を描かせる、というか描かざるを
得なくなるんです。満足してしまったら、もう絵なんて描く必要はないんですよ」
結城は一気に、興奮気味に語ってから、そのことをごまかすように訊いた。
「……もう一杯飲みますか?」
 結城にそう尋かれた早川は、
「それより、ちょっと散歩にでも行きたくなりました」
 結城はそれを聞くと笑顔になった。
「テレパシーを、感じてくれましたね。でもその前に、バルコニーの花に水をやりたいんです」
 結城はレースのカーテンを開き、大きなガラス窓も開けた。早川もバルコニーに出て爽やかな風に吹かれた。屋外はまだ暗い。広いバルコニーには早川がよく知らない様々な植物が植えられていた。目を上げると、雲ひとつない快晴だ。満天に夥しい星々がひしめいている。
すうっと流れ星が走って消えた。
「梅雨明けですよ!星が凄い!サイドボードに双眼鏡がありましたね」