新世界
ボレル大佐は詳細を語ってくれた。ルディは俺を庇い、銃弾をその身に受けながらも、憲兵達の前に立ちはだかったらしい。俺が完全に見えなくなったのを確認してから、ルディは憲兵と共に山を下りた。銃弾はルディの左肩を貫通し、殆ど歩けない状態だったのだという。見かねた隊員の一人がヴァロワ大将からの支持を仰ぎ、その配慮で帝都に戻る前に病院へと連れて行った。そして翌日、ルディは自ら帝都に戻ることを告げたのだという。
皇帝に進言するために――。
ルディらしい行動だと思った。やはり俺は、あの時何としてでも――ルディを担いででも共和国に亡命させるべきだった。
「今日は遠路をお越し頂きありがとうございました。貴方がたの――いえ、既に降伏した兵士達全員の安全は保障します。ご不便をおかけすることになりますが、貴方がたは身の安全のためにも、西方警備部に留まって下さい」
ありがとうございます、とウールマン大将が応える。
その後、二人は再び専用機でマームーン大将の控える西方警備部へと戻っていった。
「宰相やヴァロワ大将、それにウールマン大将が指揮を執っているような戦争だったら勝てなかったな」
二人を見送って執務室に戻ってくると、ムラト大将が何気なく呟いた。
「……そうでしょうね」
尤もルディが宰相であったなら――、そして皇帝がルディの意見を聞き入れていたのなら、このような事態にはならなかっただろう。
帝国との戦争は日に日に激しさを増していった。数日に一度は、支部制圧の報告が入って来る。アジア連邦や北アメリカ合衆国との会談も頻繁に行われるようになり、帝都侵攻に向けて、大詰めを迎えていた。