蝋人形幻想
命の意味も知らずに、冷たい蝋の中で眠り続けていたでしょう。
私は、そろそろ失礼いたします。色々と、考えるべきことが山積みなのです。
ですから、あなたもお帰りになられてはいかがですか?
いつまでもここにいては、いけないでしょう。
それに、ここにはあなたが望みさえすればいつでも来ることができるのですから。
一人の男と、一つの蝋人形のことさえ忘れなければ……の話ですが。
はい? 本当に生きているのかですって?
それは……あなたのご想像にお任せいたします。
今まで、私はあなたにずっとお話をしてきました。あなたは、紅茶も召し上がりましたね?
それが、すべてですよ。
それさえも、誰かの夢かもしれませんが。