饒舌な艦隊
「ジョン・F・ケネディ、敵艦の右舷に付け、主砲よーいっ!」
私の正面の男が重々しく口を開いた。
「了解。ジョン・F・ケネディ、敵艦の右舷に向け、微速前進っ!」
わたしの右斜め前の男は、そう言うと、ゆっくり私の右側に近づいてきた。気味が悪いし、なんかムカついたので、そいつの右足に私の右足を引っ掛けてやった。すると、そいつはあっさり転び、言った。
「右舷後方被弾っ、沈んでいきます。提督に栄光あれ」
「くそぅ、バカなっ。なぜ、こんなに易々とやられるんだ」
正面の男が心底悔しそうに言った。
「こちらの作戦が漏れているのでは? はっ、さてはこの中にスパイが……」
私の左後ろの男が、なぜか、棒読みで言った。
「なにぃ? スパイが? さては貴様かーっ」
正面の男はそう叫ぶと、私の左斜め前の男に跳び蹴りを食らわせた。
「ち、違います。ぐわーっ!」
左斜め前の男は、一撃であっさりとノックダウンされた。
「ふっふっふっ、この時を待っていたぞっ! クーデターだ。さぁ、カーネル・サンダース、提督を攻撃しろ!」
私の左後ろの男が、今度は、興奮して言った。しかし、カーネル・サンダースと思しき私の右後ろの男が攻撃したのは、私の左後ろの男だった。
「くそぅ! 貴様、二重スパイだったのか」
悔しがる左後ろの男。
「よくやった!」
喜ぶ提督と思しき正面の男。
「しかし、貴様も道連れだ」
「提督に栄光あれ」
反逆者とカーネル・サンダースは相討ちで果てた。
何だか良く分からん内に、敵は提督らしき男1人を残すのみとなった。
「なぜ、私を襲った? お前らは何だ?」
私は尋ねた。
「分からずとも良い。それは、後の歴史が決めること。そもそも……」
提督の話が長くなりそうな予感のした私は、ツカツカと提督に歩み寄り、提督の扇風機のスイッチを切った。
「すっ、スクリューがーっ!」
と断末魔の声を残して、提督は崩れ落ちた。
(終わり)