八百万の神のごく一部
「実は、私は神なのだ。お前に、これを与えよう」
若者は1頭の羊を与えられました。若者は、早速、羊を食べようと思いましたが、目を見ているうちに、かわいそうになって逃がしてあげました。すると、羊はスックと立ち上がって言いました。
「実は、私も、神なのだ」
それが、合図であったかのように、全てのものが、次々と名乗りを上げました。
「いやー、実は、俺も神なんだよね」
と、路傍の石。
「あら! 私もよ」
と、小鳥が歌えば、
「なんだ? なんだ? おまえもか?」
と、森の木々がざわめく。
「じっつはー、僕も、神だったりしてー!」
「何を隠そう、私も、神でござる!」
「我も、神なり」
「わしだって、神じゃーっ!」
山が、川が、太陽が、風が、森羅万象、ありとあらゆるものが神本来の姿に戻って去って行きました。
後に残されたのは、果てしない無と若者のみ。果たして、彼は、大丈夫なのでしょうか?
「皆さん、うすうす感づいていると思いますが、実は、僕も、神なんです」
そりゃ、よかったね。
(おしまい)
作品名:八百万の神のごく一部 作家名:でんでろ3