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てっしゅう
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「愛されたい」 第七章 真実

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「お母さん!なにしてるの。ご飯食べないと彼女が来てしまうわよ」有里に催促されて、下へ降りていった。
「メールしてたから、遅くなっちゃったわね」
「高志お父さん呼んで来て!ご飯だからって」
「うん」
伸一がやってきて昼ご飯が始まった。
「あなた、午後から高志のお友達が来るのよ。ケーキを買ってきたから、ご一緒されます?」
「彼女が来るのか?高志」
「ああ、そうだよ」
「ふ~ん、勉強おろそかにしたら止めさせるからな」
「何でそんな事言われないといけないんだよ」
「高校生だろう?ちゃんと一流大学に行けないと将来困るぞ。遊んでいる暇なんか本当は無いんじゃないのか?」
「ちゃんと勉強はしてるよ。余計な心配しなくていいよ。それより、ケーキ食べるのか?」
「部屋で食べるから持ってこい」
「いつもそうだな・・・せっかく家族揃っているのに」
「生意気言うな、何も解かってないくせに」

食べ終えてすぐに伸一は部屋に戻っていってしまった。高志は父親に彼女を見て欲しいとは思わなかったであろうが、ちょっとは自慢したかったのかも知れないと智子は想像した。男の子にとって父親の存在は目標であり、かつ超えなければならない存在でもあったからだ。

ピンポーン!と玄関のチャイムが鳴った。
「来たわよ、高志」
玄関ドアーを開けて女の子が高志と一緒にこちらへ来た。まず智子に向かって、「母です」と紹介して、次に有里をみて、「お姉ちゃんです」と紹介した。

「初めまして。高橋美咲といいます。高志さんとは同じ学校の後輩です」
「高橋さん、二年生なの?」智子は訪ねた。
「はい、そうです」
「可愛らしい方ね。こちらにいらして。ケーキを買ってきたから食べましょう。飲み物なにがいいかしらね?」
「では、紅茶を下さい」

4人でテーブルに座ってケーキを囲んで話が始まった。高志の連れてきた高橋美咲は、可愛くてしっかりとしているとてもいいお嬢さんだと智子は思った。このまま長く交際が続くといいと、この時は思っていた。

美咲は有里が着ていた服を見て、
「有里さんのお洋服とても可愛いですね。とってもお似合いでいいなあ」
「美咲、お姉ちゃんのじゃないんだよ。お母さんの服借りたんだ」
「高志!余計なこと言わなくていいのに」
「だってそうだろう?別にいいじゃん。お母さんと同じサイズなんだから」
「有里さん、そうなんですか?おば様のお洋服でしたの」
「そうよ。可愛いから借りたの。美咲ちゃんはいつもどんなお洋服着ているの?今日みたいにジーンズが多いの?」
「いつもは大抵ジーンズです。ミニは自信がなくて・・・私は母とは体型が違うので借りれないんです。それにしても、おば様も有里さんと同じでスタイルいいから羨ましいです」

美咲は少しぽっちゃりしている事が気になっていたのだろう。本当は自分も有里が着ているような服を着てみたいと話した。

「美咲ちゃんは可愛いよ。別に着てもいいんじゃないの?ねえ、高志だってそう思うでしょ?」有里は高志の顔を見てそう言った。
「そうだね。お姉ちゃんは服は可愛いけど、美咲みたいに性格が可愛くないからなあ・・・」
「何言ってるの!そんな事聞いて無いじゃん。あなたもデリカシーがないわね。美咲ちゃん、こんな奴やめちゃいな」
「酷いよう、そんないい方。冗談に決まってるじゃない」
「高志さん、謝ったら?有里さん素敵な方よ。私は一人っ子だから、話す相手がずっと居なかったけど、大切にしないといけないって思うの」
「美咲ちゃん・・・ありがとう。高志より全然大人だわ」

美咲は仲の良い兄弟だと感じた。三人の会話を聞いていて智子は若いって素晴らしい事だと美咲と高志の仲を応援しようと思った。
「美咲さんはお住まいどちらなの?」初めて智子が口を出した。
「はい、島田です」
「じゃあ、学校までは近いね」
「自転車で10分ほどです」
「お父様は何をされているの?」
「・・・父はいません。小学校のときに母が離婚しましたから」
「そうだったの。ゴメンなさいね、気にしていたことを聞いちゃって」
「いいえ、いいんです。恨んでなんかいませんから。でも父とは逢えないからどうしているのだろうって、この頃考えます」

美咲は寂しそうな表情を智子に見せた。

「逢えない理由があるの?」智子は少し聞いてみたくなった。
「はい、母が嫌がるんです。離婚をしたときに、私とは逢わせないって言う事を条件にしたそうです」
「そう・・・余程お父様に嫌な事があったのね」
「詳しくは話してくれませんから私には解りませんが、この頃父に逢いたいって時々思うんです。母にはいい出せなくて・・・」
「そうでしょうね。可哀そうな気がするけど、お母様のお気持ちも解るような気がするわ。もう少しあなたが大人になってから自分で決めたらいいわ」
「はい、そうしようと思っています。おば様はおじ様と仲いいんですか?」

そう聞かれて、ドキッとした。高志と有里も顔を見合わせて智子が何と答えるのだろうかとツバを飲み込んで見ていた。

「夫婦もね20年もやっていると、仲がいいとか悪いとかじゃなく、雲みたいな存在?ふわっとしているような感じかしら。そこにあるのは解るけど、掴めないって」
「難しいですね。空気みたいってよく聞きますけど、雲ですか・・・」
「お互いが束縛から離れて少し自由にしたいって考える頃なのよね。ずっと仲のいいご夫婦もいらっしゃるようだけど、大体は私たちみたいな感じだと思うわ」
「母を見ていると時々寂しいんじゃないのかなあって感じるんです。私も大きくなったからずっと母の傍にいるわけじゃないし、一人の時間がそう思わせるんだろうと気になっているんです」
「あなたは偉いわ。お母様の事そんなふうに感じられるなんて。再婚なさるかもう一度お父様と話されて元通りになれるといいのにね・・・でも無理かなあ」
「多分・・・無理ですね。再婚ですか?新しい父を私が受け入れられないと思います。今の父のこともっと知ってからでないと」
「そうね、まずはあなたがお父様と逢えるようにする事よね」

智子は美咲と父親を引き合わせる役目をする。偶然にも皮肉な結果でそうなってゆく。

美咲は高志の部屋に行って二人きりで話すようになった。智子は有里と顔を見合わせてにこっと笑った。
「どうしたの?笑ったりして」
「なんでもないのよ。深く考えないで」
「あの二人、隣にお父さんがいること知っているのかなあ?」
「どうして気になるの?」
「だってさ、話すこと無くなったら・・・男と女でしょ?声が聞こえたりしたら、きっとえらい事になるわよ。お父さんのことだから」
「そんな事しないでしょ?私たちだって居るのよ」
「わかんないって・・・美咲ちゃん次第だと思うけど」
「あの子に限ってそんな大胆なこと出来ないわよ」
「そうかな・・・私は彼の家に行ってもしないけど、お母さんはどう?昔そういうこと無かった?」
「あるわけないでしょ」そう言いながら、大胆なことをしようとしている自分に気付かされた。

心配していたようなことは起こらず美咲は夕方には帰っていった。高志は有里に何か言われたのであろう、機嫌の悪い顔になっていた。
「母さん!お姉ちゃん何とかしてよ」
「どうしたの?」