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誰も、何一つ覚えててなんかくれないんだ

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誰も、何一つ覚えててなんかくれないんだ

 生まれたときのことを思い出す。キラキラする光と、隣で上がるはしゃいだ声。
 過ぎ去ったもの、もう手なんて届くはずがないと諦めていた。なのに
 「カインちゃん!」
 ぼふ、と胸に飛び込まれて呆然とする。
 「…ティシル?」
 「逢いたかった!逢いたかったよ、カインちゃん」
 胸に擦り寄ってくる少女は、確かに幼い頃の面影を残していて―
 「ティシル、お前…一体どうしてここに」
 「捜してたんだ、カインちゃんのこと。だから偵察隊に志願して、ずっとカインちゃん連れて帰るつもりで捜してた」
 捜してた?自分を?
 「俺は、もう堕天使だ…お前と一緒には」
 「そんなことない!」
 言いかけた言葉を強い調子でさえぎられる。大きな青い瞳は今にも泣き出してしまいそうだ。
 「分かるもん!一緒に生まれた私には、カインちゃんがまだ天使だって!」
 「ティシル」
 同時に生まれた天使は、強い絆を持っているという。自分が生まれた時、きゃー!と大きな声で産声を上げた彼女。ずっと一緒に居た、大切な存在。
 「お前が言うなら…信じてもいいのか?戻れるって」
 「絶対に戻れるよ!戻れなくても、私はカインちゃんと一緒にいる!」
 優しい声とぬくもり、懐かしさに涙が出そうになる。
 「もう、誰も俺の事を覚えてないと思っていたけど…違ったんだな」
 「あの頃の友達、皆で捜してたんだよ。カインちゃんのこと見つけようって」
 「皆で?」
 結構、人数が多かったはずだ。友達の居ない子供ではなかったから。
 なにか胸にこみ上げるものがあって、切なく締め付けられる気がした。
 「それは…帰ったら騒ぎになりそうだな」
 「うん」
 泣きながらしがみついて笑うティシルを抱きしめて、肩の力が抜けていくのを感じる。
 暖かい場所に帰ることが出来るなんて、思いもしなかった。帰ってもいいと
彼女が言うなら、本当なのだろうと思う。
 ティシルが自分に嘘をついたことは一度もない、自分で思うほどには闇に
染まっては居なかったことに驚く。
 「もし無理でも…お前と一緒に居られるなら、それでいい」
 「大丈夫だよ、私はずっと側にいるよ。」
 優しいのに、力強い笑顔を向けられて…自分も笑い返していた。


 如月の天使観
・羽根タマゴから生まれます
・悪魔と混血でも、天使の血が濃いと天使になります
・生まれてしばらくは、小天使という手のひらサイズです
・小天使のときは頭に輪っかがあります(さわれます)
・学校で勉強して一人前の天使になります
・小天使をさらう悪い悪魔も居ます。善い悪魔も居ます
・さらわれた小天使は堕天使にされちゃうことが多いんです
まだ続くけど、続きはそのうちに。