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アフタヌーンティ

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「私達はお前の味方だよ」
「うん。ありがとう」

 一言で充分だ。
 多くを語る必要はない。娘はもうわかってくれているはずだ。

 ただ、不安だったのだ。自分が思っている事が本当なのかどうかが。
 最初からすべてが上手くいくはずがない。時には失敗も必要だ。
 そのときに深く傷つかないように、さ迷い続けるようなことがないように、見守り続けていくことが、今の私達の役目なのだ。


「彩さんから紅茶をもらってきたの。すぐいれるけど、お父さんも飲む?」
 娘は手に持っていたビニール袋から金属製の入れ物を一つ取り出して、紅茶を飲む仕草をしてみせた。
「そうだな、お願いしようか」

 私はもう充分に幸せだ。
 そろそろ幸せになる順番を娘に譲ってもいい頃ではないだろうか。
 何年先かはわからないが、娘の幸せが私の幸せになる日がくる。

 きっとそうなる。


 娘はそのままキッチンに足を向け、しばらくして三組のティーセットを持ってきた。

「ミルクティーにして飲むんだって」
 そう言いながら『English Garden』と銘打ってある茶葉の入れ物をマジマジと眺める。
 娘の表情には、一点の曇りも見当たらなかった。

「ママを呼んでくるね」
 娘は席を離れた。
 妻を連れて戻ってきた娘は、私達にその胸のうちを話してくれるのだろうか。


 秋晴れの空の下。
 夕暮れには少し早い昼下がり。

 たまには違う香りを楽しむのもいい。
 きっと忘れられない香りになる。

 私はミルクを少し加えて、甘い香りを感じながらゆっくりと目を閉じた。


 ― 『English Garden』 了 ―
作品名:アフタヌーンティ 作家名:村崎右近