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Like a dog 2

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3.甘い夜?



ノックの音がしてドアを開けると、満面の笑みでハリーが立っていた。
「来たよ!」
嬉しそうな声で笑いかけてくる。
「―――しっ」
そう低く言うとハリーの手を取り、強引に中へと押し込み内側へとドアを閉めた。
パタンという音とともに、部屋はふたりきりになる。

ドラコは薄青い瞳で早口なまま、小さな声で注意を促した。
「ここは石造りだから結構、廊下の声は響くんだ。特に消灯後に見つかると、監督生の僕が規則を破ったことになるから、他の寮生に示しがつかなくなる。だから静かに入って来いよ」
手を引っ張られた弾みでドラコの胸元に額をぶつけて、顔をうずめるような格好になったままのハリーは、ご機嫌に「分かった」と短く答える。
身を寄せると相手からは心地のいいシャボンの匂いがした。
夕食のあと消灯までの自由時間に風呂に入るのは当たり前な行為なのに、なぜか自分のために入ってくれたような変な錯覚をしてしまいそうだ。

「でもさ、部屋を訪ねるときはノックするのがマナーで、それが普通だと思ったんだ」
「そんなことは構わない」
「―――構わないって?」
「ノックをしなくても勝手に部屋に入ってきてもいいってことだ」
「いいの?」
コクリと頷く。
「消灯後に鍵は開けておくから、勝手に入ってきてもいい」
「……うわぁ、それって、まるで深夜の恋人たちの密やかな逢瀬って感じだよね」
嬉しさのあまり思ったことを口にした途端、パシリという小気味いい音とともにハリーの後頭部に激痛が走った。

「わっ!!いきなり頭を叩かないでよ!ひどいなぁ」
グーで殴られないだけ少しはマシなのかもしれないが、やはり叩かれると痛い。ジンジンと響いてくる頭の後ろを擦りながら文句を言った。
「ひどいのはいったいどっちだ、このバカ!よく考えてみろ!犬だ。犬に決まっているだろ。かわいい犬がやってくると思ったからこそ、それのために施錠を外すんだ。誰が図々しいお前なんかのために、部屋の鍵を開けるものか!いつもふざけたことばかり言いやがって……」
ぶつくさ文句を言いつつ、相手の肩を押してふたりの間の距離を取る。

「……それで、ポッター。いったいいつまでその格好でいるんだ?」
腕を組み不機嫌そうな顔で、ハリーの制服姿をジロジロと見詰めた。
「僕が招待したのは、君じゃないはずなんだけど?」
「ああ、分かっているよ。もちろんだよ。変身するのは得意だし、時間もかからないから、もうちょっとこのままお喋りしない?」
ドラコはゆっくりと首を横に振る。
「いやだ」
「もう少しだけは?」
「……ハリー。約束を反故にするっていうなら、もう僕の部屋に二度とやって来なくてもいいぞ」
この部屋の家主の特権を振りかざし、冷たく不機嫌に応対した。

(フン。そんなこと言っても、前だって一週間も我慢できなかったくせに。まったく!)
ドラコの素っ気無い態度に心の中でぶつくさ文句を言いつつ、ハリーはちょっとムッとした顔で、いきなりローブを脱ぐ。
続いてネクタイを緩めると、シャツの上ボタンを4つほど外し、そのまま上に引っ張ってそれも一気に脱ぎ捨てた。

目の前で相手がストリップ同然のことを始めて、逆にドラコが慌てた声を上げる。
「なっ!何しているだ、ポッター!!いきなり服を脱ぐなんて。僕はそんなリクエストをした覚えはないぞ。止めろ!」
「やめない!」
きっぱりと宣言して、そ知らぬ顔で裸になった上半身を反らすようにして見せ付けた。
ドラコは真っ赤と真っ青が入り交ざった複雑な顔色のまま、表情を引きつらせている。

靴も靴下も脱ぎ飛ばし、ガチャガチャとバックルを外して、ズボンのファスナーを下に下ろしだしたのを見て、「ギャッ!」とドラコらしからぬひっくり返った声を上げた。
「待て!待つんだ、ハリー!脱ぐな!それ以上脱ぐな」
「なんで?服を全部脱がなきゃ変身できないよ」
「―――えっ?出来ないのか?」
「うん」と気軽に答えて、腰のあたりで絡まっているズボンを下へと落としていく。
隠れていた青色の中に星がプリントされている、結構派手な柄のトランクスが現れると、ドラコは二三歩後ろへと後ずさった。
「うううう……勘弁してくれよ、まったく!こんな至近距離で同性の裸なんか見たくもない」
首を小刻みに振りながら弱音まで吐く始末だ。

見るのがイヤなら視線を外すとかすればいいものを、ドラコは少しパニクっているのか、そんな考えすら思いつかないようだ。
ただ服を徐所に脱いでいく、ハリーの裸に釘付けになっている。

ハリーは別に自分の行為に照れることもなく、最後の一枚も躊躇せずに脱ぎ捨てた。
「ひ……っ!見たくない。気持ち悪るー」
ドラコの低くうめく声が聞こえるけれど気にしない。
前回もこの部屋で全裸を相手に披露したのだ。
しかもご丁寧に立派に朝勃ちまでしていたし。
今は流石に下半身も大人しいし、裸を晒すのも二度目になるから、ハリーには別段どうってことない。

前すら隠そうとはせず、ハリーは腰に手を当てたままで、気軽に尋ねた。
「―――で、ドラコは今日はどんな姿がいいの?」
相手は金縛りにあったようにピクリとも動かない。
「ええっと……。ドラコ?」
再度尋ねても相手は固まったままだ。

(変なドラコ。もうこんな姿は慣れていたと思ったのに?そんなに僕のヌードって魅力的?)
うつむき自分の裸を確認して自惚れまくったことを考えて顔を上げて、相手の引きつりまくった表情を見てハハハと力なく笑う。
(前は朝でドラコも少し寝ぼけていたし、かなり頭に血が昇って怒りまくっていたから、この姿もあまりショックじゃなかったのかなぁ。……まぁ確かに、素面でヤローの全裸はきついよなぁ。しかも今は部屋にはふたりきりだし)
ふぅーとため息をついた。

「ええっと、このままでもいいの?」
ドラコは引きつり固まった顔のまま、「それだけはイヤだ」という表情で首を横に振った。
「……じゃあ、どういう格好がいいの?希望の犬種とかある?」
それには思考が固まったままなのか、ぼんやりした顔で答えない。
もう仕方がないから前を手で隠そうかとも思ったけれど、今更の感があった。
股間を隠したところで、ドラコは固まったままだろう。

(本当にドラコって、こういうことに弱いよな。相手が予想外の反応をしたら固まって対応できないっていうのが、お坊ちゃん育ちというか、ボンボンだっていうのか、なんていうのか……)
いくら尋ねても一向にドラコは返事をしてくれない。
頭を掻きながら無言の相手を見詰めて、ちょっと困ったように肩をすくめた。
自分だっていつまでもこの真っ裸のままでいるのは、傍から見たらまるで嬉しそうに裸体を晒し続けているド変態みたいだ。

「しょうがないなぁ……。じゃあ、僕が勝手に変わるけど、いいよね?」
もう相手の反応のなさを無視して杖を振り、小さな声で呪文を唱えた。

淡い光がハリーの全身を包み、徐々に姿が小さく前かがみになり、尾が伸び、耳が上へと生えてくる。
このアニメーガスの術は痛みはないのだけど、背筋の中がモゾモゾ動くような、骨や器官が体内で移動するような感じは、決して気分のいいものではなかった。
作品名:Like a dog 2 作家名:sabure