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ななじゅうく
ななじゅうく
novelistID. 30706
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信じてないだろ!

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「信じてくれないと思うんだけど」
坊主頭の生徒は、なにやら深刻な顔つきだった。
「なに」
「UFOを見たかもしれない」
「へえ」
メガネをかけた生徒は、あまり関心のない様子だった。
「あ、信じてないだろ」
「うん」
「まあ聞け、続きがあるんだ」
「ああ、うん」
「昨日、駅でさ、ほら、あそこって、夜になると悪そうな顔が集
まるだろ」
「うん」
「俺さ、直接駅に用事はなかったんだけど、夜の7時くらいに近
くを歩いてたんだ。あの、駅前の広い道路な。
そしたら、突然なんか、でかい声が聞こえたんだよ。なんて言っ
てたか、よく聞こえなかったけど、最初はそいつ等がただ、騒い
でるだけだとおもってたんだ。だから、うるさいなって思いなが
ら、ちらっと、声がしたほうに目をやったんだ」
「ん、うん」
「そしたらさ、そいつ等、身を乗り出して空のほう見てたんだよ
。それで、なんか興奮しながら、3、4人いっぺんに喋ってた。
そっちに何かあるのかと思って、俺もそいつ等の目線の先を追っ
たんだ」
坊主頭の生徒は、一呼吸置いてから、凄みのある声で言った。
「UFOが、飛んでたんだよ」
「うん」
「あ、信じてない」
「うん」
「いや、俺もさ、最初は」
「えっ?あっ、ごめん」
「んっ?」
「いや、なんか途中から聞いてなかった。ごめん」
坊主頭の生徒は、少し、動揺した様子で、一度唾を飲み込んでか
ら、とりあえず呼吸を整えた。
「えっと、どこから」
「UFOを見たとか言ってなかったかな。そのあたり」
「いや、ちょ、待てよそれ、すごい最初のほうじゃないか」
「ごめんごめん、でもその先も一応、なんとなくは聞いてたよ」
「じゃあ内容は」
「それは、その、忘れたけど」
「やっぱり、聞いてなかったんじゃないか」
「違うって、忘れただけ。聞いてたことは、聞いてたんだって」
「ふーん」
「あ、信じてないだろ」
話している二人のそばに、クラスメートの女子が一人、近づいて
きた。
「なんの話かと思ったら、あれでしょ。今日エイプリルフールだ
から、なんかそういう感じの話してたんでしょ」
「えっ」
「えっ」
黒板を見ると、確かに、四月一日と書かれている。
「あ、そういうことだったのか」
「ええっ、いや、そういうわけじゃないんだけど」
「大丈夫、ほかの人には言わないってば」
「いや、ほんとにたまたまなんだって、違うって」
「あ、そう。ふーん」
「違うって!ほんとだって!ほっ」

坊主頭の生徒は、焦って、喋りながら唾を飲み込んだ。

「あ、その顔。信じてないだろ!」
作品名:信じてないだろ! 作家名:ななじゅうく