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ななじゅうく
ななじゅうく
novelistID. 30706
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違和感

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車が一台、通れるかどうかわからないような狭い道。
そこに、一台の自動販売機が置かれていることを、僕は知ってい
た。だから、普段なら避けて通るような、こんな不便な通りを、
我慢しながら歩いていた。
残念ながら、目当ての炭酸飲料は売り切れていたが、別に、喉の
渇きが癒せるものならなんでもよかったので、さっさとコーヒー
でも買って、ぐびぐびと一気に飲み干した。
そして、空き缶となった容器を、ゴミ箱に投げ込んで、ガコンと
いう音を聞いたその瞬間。視界の右端ぎりぎりに、夜道を歩く女
性が、ちらっとだけ見えた。
軽く首を動かしてそちらのほうに目をやると、女性は、少し遠い
程度の距離から、こちら側に歩いてきていた。
そしてだんだん、自動販売機の明かりに近づくにつれて、彼女の
顔が、僕の知っている人物に、非常に似ているということが、明
らかになってきた。
もしかして、と思ったので、女性が近づいて来たときにこちらか
ら声をかけてみた。やはり、むこうも僕の顔を見てピンと来たよ
うで、あ、小宅(おやけ)君?と返してきてくれた。もちろん僕
はその小宅君なので、思ったとおりこの女性は、中学生時代の同
級生だった。
ん?
僕はそのとき、懐かしさとは別に、小さな違和感を覚えていた。
反射的にぴくっと痙攣した。あまりにもわずかな動きだったので
、とくに、彼女に不審に思われることはなかったようだが、むし
ろ僕のほうが、彼女に疑いを持ち始めていた。
彼女は、最近の僕の生活について質問してきたり、昔のことを思
い出して懐かしんだりしていたが、そのたびに僕は、適当に答え
たり、思い出したふりをしたり、相槌をうったりして、当たり障
りのない程度に誤魔化した。
そして、そのうちに、ようやく僕は、さきほど感じた違和感の正
体へと辿り着いた。
彼女が言葉を発するたびに、それは確信へと変わっていった。
僕は、思い切って、それを言葉にした。
あのさ。
何か佐藤さん、雰囲気が変わったかなって思ってたんだけど、何
が変わったのか、今、やっと気づいたよ。
確か、佐藤さんさ、以前は、にんにくが嫌いだったよね。あれ、
克服したんだね。

僕は、ひっぱたかれた。
作品名:違和感 作家名:ななじゅうく