こんな夢を見た
冷えた夜の砂漠に居た。
辺りを見回すと十字に組まれた木がいたるところに刺さっている。見回すとその中に一本だけ様子の違うものが含まれている。十字に組まれた木ではなく銃剣が地面に刺してある。そしてその銃剣の肩当てにヘルメットがかけてある。そのヘルメットのてっぺんに付箋が貼ってある。その付箋には「おまえ」と書かれている。
しばらく歩くと背の丈の二倍ほどあるサボテンに出くわす。そのサボテンの横に伸びた部分にはブランコがかけてある。そのブランコには汚れて綿の飛び出たクマのヌイグルミが腰をかけている。そのヌイグルミに付箋が貼ってある。その付箋には「おまえ」と書いてある。
さらに進むと夜空にオーロラがかかっていることに気付く。オーロラの中には男女がまぐわっている姿が映し出されている。交わっている局部に青年マンガ雑誌で局部を隠すために入れるような黒いスミが入っている。男がきわまったのだろう、腰を振るのをやめて女を強く抱く。そして局部が写しだされ、その局部のスミにワザとらしい明朝体の白字で書かれた「おまえ」という文字が女の局部へと流れ込む。男が女から局部を引き抜くとその文字は消える。
ため息を一つつく。タバコが吸いたくなって胸ポケットから箱を取り出し、セブンスターに火を点ける。味がしない。味がしないことにムキになって思いきり吸い込む。むせ返る。その拍子、そこに突っ伏してむせび泣きながら死にたくない、生きたくない、死にたくない、生きたくないと、叫ぶ。そこで目が覚める。
「ミンミンミンミン」と蝉の鳴く音がして、やがて止んだ。響く軽い落下音。手の甲で顎下の汗を拭いながら網戸に近付く。蝉の亡骸。そして「カナカナカナカナ」蝉の鳴く音がまた聞こえた。