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間引き

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この世界では他国との戦争は禁じられている。平和のためだ。
この規則を破った国は、滅ぼされる。
そのためにこの世界の「軍隊」は存在している。
そのため国の面積は増やすことができない。
人口が増加しすぎると問題が起こる。
働き口の不足。一人あたりの土地の減少。食料の限界。その他もろもろ。
人口は多ければいいというものではない。

ここに大きな国がある。そこはとても発展した国で、人口もとても多い。
この国は絶妙なバランスで人口を保っている。

そこに一人の男がやってきた。彼は旅人である。どうやら旅を始めたばかりらしい。なんとも生き生きした目をしている。

この世界の旅人は多くの国を回り、生きるために様々なことをする。
とある国で手に入れたものを、できる限り高い値で売れるところに持っていき、売る。そこで別の何かを買い、それを別の国で売る。
旅人はその多くが商人でもあるということだ。
大規模にそれを行って多くの利益を得る者もいれば、ひっそりと旅を続けられる程度に行う者もいる。これは旅と金のどちらがメインかという違いによるものだ。
他の旅人を襲って生きる旅人もある。これは盗賊と言ったほうが正しいだろうか。

さっきの国の話だが、実は人をこっそり間引いているのだ。そうすることで人口を調節している。その国の間引きには、いくつかの種類がある。

目に見える間引きの例は、内戦だ。これを国内で意図的に引き起こしている。他にはテロや、殺人も意図的に起こしている。また、テロの実行犯や殺人犯をあえて見逃したりもしている。ちなみに、罪を犯して捕まった者は結構さらっと刑務所から出られる。再犯を期待しているのだ。

目に見えない間引きの例は、病院だ。入院した者の一部を意図的に殺している。病院での死亡率は他の国より少し多いのだが、その国ではそれが当たり前なので気付かない。
毒を用いたり、手術でミスをしたり、事故で搬送されてきたものを放置したりする。病院に入った者だけが知らされる事実。これを密告した者は、死ぬ。

間引きの事を知って、男はそれを公表した。その国の住人は、誰も男の言うことを信じなかった。男がいくら言っても信じない。それは嘘だと言って聞かない。彼らにとってそれは嘘にしか聞こえないのだ。

その後、男は国の辺境で交通事故に遭い、病院に搬送された。懸命の治療もむなしく、旅人は帰らぬ人となった。
作品名:間引き 作家名:うろ