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引き返したりしませんように

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味のない泉の奥底で女神さまは死んでいた。
緑は緑で、青は青だったけど、空は黒だった。
土で濡れた葉っぱの傘で何を守れたというの。

「潰したりはしないでいて」

剥がれないあなたの手のひらが上手に喋る。

「もう二度と戻ってこないで」

ぼくは頷こうと思って首を縦に振ったつもりだったけど
ああ、そういえば。
昨晩焦茶色の縄で絞めてしまったから上手く動いてくれなかった。
あなたと同じ赤い痕だから、ぼくは嬉しいと思っていたはずなのに。

穏やかな灰色の中で、ゆるり消えた月光だ。
ぼくは歩こうとおもって、あなたの手を溶かそうと思った。
塵になる思いが、センチメンタルすぎるぼくの瞳を焦がした。

戻れないけれど、戻ってきたい場所だ。
何度でも、何度でも、何度でも、
ぼくがもう何度でも破ったあなたとの約束の中で
守りたいものなんてどこにあったの。