ゆうかのエッセイ集「みつめて…」
人がよく口にする言葉に、頭に引き出しがたくさんあって…というのがある。
残念な事に 私には頭の引き出しが少ないらしくって、あんまり覚える事が出来ない。
実際には、一般的に脳の皺に色んなものが刻まれて行くらしいのだけど…。
私にはその皺もやはり少ないんだろうなぁとつくづく思う。
人の名前や色んな数字、地名なんかも何度聞いても、忘れるのではなく最初から覚えられないのだから情けない。
しかし 今日ある人の言葉を聞いて ふと思った。
私には別の引き出しなら沢山あるのかも…と。
それは「想い」をしまってある引き出しだ。
物心ついてから今日までに、沢山感じた色んな想い。
初めてのお子様ランチを食べた時、誰と何処でどんな理由でどんな店に行ったのか。
今でも鮮明に思い出す事が出来る。
それはきっとそのお子様ランチがとっても美味しかったのと、そのレストランで食事する事自体が夢のようで、私はお姫様になったような気分になり、子供心にも感動したからなのだろう。
幼稚園の運動会でダンスを踊った時、男の子と手を繋いだら、その子が私の手をつねってきた。
痛かったと同時に、何故? って悲しくなった。
初めて映画を見に行ったのは、小学1年の時だった。
白黒映像の「101匹わんちゃん」だった。
とても楽しかったけど、父に連れられて入った映画館は、広くて真っ暗で、まるで「宇宙の中!?」って感じで怖かった。
初めて異性に恋した小学5年の時、彼は転校生だった。
一緒に勉強する約束をして、数回彼の家に行った。
淡い恋、初恋だった。
だが彼は、半年もしない内に、また転校して行ってしまった。
彼の名前は わたなべ よしきよ。今でも覚えてる。
病気でも怪我でもないのに、胸が痛むという事を知った。
大人になるまてに知った色んな感情、色んな想い。
大人になるとそれは益々増えて行ったけど、私の「想い」の引き出しには、今でもちゃ〜んとしまってあって、何かの拍子にひょっこり顔を覗かせる。
記憶することが、出来ない私なのに…。
考えて見ると、その「想い」のひとつひとつには、必ず誰かの影がある。
人と人との触れ合いが、時には大きなふれ愛になって、また私の引き出しにしまわれる。
引き出しの中にある「想い」の数は、今迄の私の、出会いの数に他ならないと、今やっと気付いた。その人のお蔭で…。
作品名:ゆうかのエッセイ集「みつめて…」 作家名:ゆうか♪