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ゆうかのエッセイ集「みつめて…」

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そいつは私が今のアパートに引っ越すよりも、多分ずっと前からそこに居るんだろう。

私が仕事を終えて電車で帰宅し、下車駅で降りると、自宅まで2人が並ぶのがやっとの狭い路地を延々(ではないが)5分歩く。

すると何処からか、そいつは音も無く私のすぐ側までやって来て、いつも私をギョッとさせる。

はっとして、何だこいつかぁ〜と安堵するのも束の間、そいつは私が歩くと歩き、止まると止まる。
それも必ずほんの少しの距離を置いて。

自宅に着くまでずっとその調子で付いて来る。
何とも気色の悪い猫である。
もちろん鳴き声など上げない。

その風態も、『一体何年生きているのかしら?』と、首を傾げたくなる程図体はデカく、歩き方ものっそのっそと言う感じ。
『もう何年も毛繕い等していないのか?』と、尋ねたくなる程毛もぼうぼうで、そいつが側に来ると背筋がぞぉ〜とする。

それでも一度だけ、たまたまお菓子を持っていたので、
『お腹でも空かせているのかしら?』と思い、
そのお菓子をそっと側の地面に広げてやってみた。

ところがそいつには、私の好意は届かなかったのか、全く知らんぷり。
私は『なんて奴だ!せっかくの私の好意を無にするなんてっ!』と、少々ムカつきながらそのまま家に帰った。

しかし後でよーく考えて見ると、もしかしたら猫ってオカキの類いは嫌いなのかも…と思い当たった。
……ちょっぴり反省(;^∇^Aアセアセ

ところが昨夜も、私がいつものように電車を降りると、例によってそいつが寄って来た。
だが何となく様子が違う。

ふぅ〜ん? なんか違うよなぁ〜と良く見ると、な、何とあのぼうぼうだった毛がまるでブラッシングでもしたかのように綺麗に整っていた。

こんな化け猫みたいな猫でも、ブラッシングしてくれる奇特な誰かがいるらしい。

いつもは化け猫にしか見えないそいつが、昨夜ばかりはボディーガードに、一瞬だけ見えた。(笑)