小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ゆうかのエッセイ集「みつめて…」

INDEX|13ページ/59ページ|

次のページ前のページ
 


仕事の関係で知り合ったKさんと、機会があってゆっくり話をした。

彼は以前ある会社の社長だったが、株主総会で代表の役を罷免され、その会社を馘になり放り出された過去を持つ。

普通なら最悪の場合でもそうならない為にも、半分以上の株を保有しておくのが当然だと思う所だが、彼は自分を過信していたらしい。

自分を過信する余り、敢えて持ち株を少なくし、「自分が必要なくなったらいつでも解雇すればいい!」
そう豪語していたらしい。
そして実際そうなったのだから笑える話かも知れない。

だけど、じゃあその後彼はどうなったのか?
そこが興味深いところである。

彼がそうなった直接の原因は、お酒だったようだ。
毎日毎晩酒を飲み、朝会社に来るべき時間に来れないと言う
呆れる状態が続いたらしい。解雇されて当然と思われる。

それからこれまでの2年間、彼は引きこもりになったようだ。

解雇されて初めて、彼は自分自身を見つめ、反省したと同時に自信を失った。彼には妻子もなかったから、独りの部屋に引きこもり鬱状態だったらしい。しかし彼には底力があった。

現在は自ら、禁酒する為に病院へ通院しているらしく、完全にお酒を断つことは出来ないまでも、アルコール中毒の域は脱したらしい。

そして夜寝る時には、睡眠導入剤を飲みながらも、今は新たな夢に向かって行動を開始したのだ。

闇の底に沈んでいた彼を、そこまで引き上げてくれたものは一体何だったんだろう。

それは、彼を心から心配してくれる、彼がかつて愛情を持って育て上げた部下だったり、全く営利の絡まなかった同業者だったり、そう言う人達のさりげない励ましの声であったようだ。

もちろん落ちぶれた彼に対して、手の平を返すような態度を取る人が多かった中でのそう言う人達は、本当に彼にとっては救いの神でもあった訳である。

現在彼は、10年後の目標達成を目指して、まだ完全には回復していない精神を引き摺りながらも 毎日頑張っている。

会っている間、ずう〜っとしゃべり続けている彼の姿を見て、自分の居場所を模索し、孤独と戦っているようにも見えた。

早く良くなって欲しいと願うと同時に、もし私が彼のような立場になった時、誰か救ってくれるのだろうか?
そしてまた逆の場合、私は救ってあげられるのだろうか?と考えずにはいられなかった。