詩集「負の領域」
何かを失った時の痛みは
失ったことのある人なら言葉にするまでもなく
その痛みが心に稲光のように鋭く刺さって
激しい熱さにヒリヒリと胸を焦がすだろう
その傷は幾年過ぎても決して消えることないケロイドとなって
その傷を目にする度にその時の痛みを思い出し
ケロイドはますます赤黒くおぞましく
そしていびつな悪魔の様相を呈してきて
嫌でも目を背けたくなるだろう
しかしその傷は時々疼いて自分の存在を知らしめようと警告を発してくる
またひとつ何かを失ったかもしれない今日
それは愛情か友情か…
はたまた言葉で言い表せない何かか…
いずれにしても
それを自分から手放したのかどうかは別にして
やはりそれはまたひとつの傷として
心にイカヅチの焼け跡を残すのだろう
そして時々疼いて苦しめるのだろう
もう何も失いたくないというのに…
平成24年5月9日