詩集「負の領域」
ある時 迷いの底にあるものを見た
そこにはとうとうと
黒き川のように
おぞましいもののすべてが
途切れることなく流れていた
憎しみ 恨みつらみ 蔑み……
己の心の川に
そんなどす黒い流れがあったなんて
いつか知らぬ間に
清らかな流れのはずが
こんなひどい有様に成り果てていたとは
その一つひとつを掬い上げ
日の光にかざしてみようか
もしかしたら
光に染まると変わるのかも
憎しみは 慈しみへ
恨みつらみは 慕う気持ちへ
そして蔑みは 尊敬へと
そんな具にもつかぬ事
考えるだけ無駄なことだと
囁く誰かの声がする
いつかその声が聴こえなくなったら
そっともう一度覗いてみよう
その時にはきっと
そこには清らかな何かが流れているのかも
それまでは軽く蓋をして
しばしをやり過ごしてみよう
その時がくるまでを