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お下げ髪の少女 後半

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夜は午後七時半からが、レストランでの仕事の開始時間となる。忙しい毎日になりそうだった。
 今までは小説家の隠れ家に、緒方は週に三日程通っていた。五箇月以上の期間、それが続いていた。来週から、多くてもせいぜい月に五回程度に減少することになりそうである。
 そうした事情を緒方が説明しても、小説家はべつだん揶揄したりはしなかった。緒方は秋までに資金を貯め、来年からは夜間の大学に通うのだと、小説家に伝えた。
 小説を書くには、学歴も職歴も要らない。しかし、ないよりはいいと「師匠」は云った。
「じゃあ、とりあえず卒業パーティーだ。明日も夕方来い。すき焼きでも食わせてやろう」
 昨夜、そう云われ、今日も仕事が終わると、緒方は手土産持参でやってきた。昨日は激しく雨が降る時間帯もあったのだが、今日は午後から初夏に近い陽射しが、工場内の芝生を青々とみせていた。五月の連休中に安曇野で、久しぶりに十号の油絵を描いてきた。初給料で買った額に納めて持ってきた。それが手土産である。それを小説家に贈呈したい。
 夕方の六時前に、緒方は小説家の隠れ家に手土産を運び込んだ。安っぽいドアの小窓を、西陽が輝かせている。静寂の中に居ると、どうしてもお下げ髪の少女を想い浮かべてしまう。毎日美緒に逢いたいと思っている。しかし、もう二度と会えないような気もする。いつもそう思いながら暮らしている。恐らく日に最低五十回は、そう思っていた。日に五十回は、胸が疼くのだった。