地中海の風
風を避けるように 狭い路地に入り、
男は小さなバーの扉を開ける。
身体も心も長旅に疲れ、そして冷え切っている。
カウンターの前に立つと
「おかえり・・・」
「今日・・必ず来ると待っていたの・・」
ラム酒と熱いレモネードのカクテルが 大きなカップに入れられ
男の前に置かれた。
女はじっと男を見ている。
男は目を閉じて 少しずつ飲んでいる。
男の頬に少し赤みが戻ったようだ。
「ありがとう・・ 美味しい・・・助かった」
言葉は 2人には もういらなかった。
2人の心の中に 懐かしい地中海の青い海と空・・・そして風が吹いていた。