表と裏の狭間には 十話―柊家の年末年始―
十二月。
師走。
December。
なんでもいいが、とにかく一年で最後の月である。
そして。
今日は。
聖夜。
即ち。
クリスマス。
………………。
さて。
今年のクリスマスは。ちょっと忙しかった。
今年のクリスマス、どうしようかなーと思ったら。
蓮華は『申し訳ありません。家の人と旅行に行くことになってしまいまして』だ、そうで。
ゆりは『家族旅行。ごめんね。』だそうだ。
他の連中もそんな感じで。
という訳で。
今年のクリスマスは、雫と過ごすことになった。
「お兄ちゃん!いつまで寝てるの?」
何か起こされた。
「そろそろ起きようよー。」
ゆさゆさゆさゆさ。
「ちょ、おま、やめ、待て待て待て………。」
寝起きの頭を揺さぶられて、ちょっと混乱する。
「おはよう、お兄ちゃん!」
目を開けた俺に、雫が満面の笑みで挨拶する。
「ああ………おはよう。」
何かすごい眩しい笑顔だな。
「今日はお兄ちゃん、ずっとお家にいてくれるんでしょ?」
「ああ。まあね。」
「ふふっ。二人っきりのクリスマスだねっ。」
ああ、そうか。
こいつ、それが嬉しいのか。
「まあとにかく、俺の上から降りろ。」
「う、うん。」
こいつはいつの間にか、マウントをとってやがった。
「あ、ごめんね。」
降りる雫。
「じゃ、朝ごはん用意してあるから、すぐに来てね~。」
と言って、雫は部屋から出て行った。
「ふぁぁあああ。」
欠伸をしつつベッドから降り、着替える。
部屋着に着替えて、リビングに行くと。
パァン!と、音がして。
「メリークリスマスだよっ!お兄ちゃんっ!」
サンタクロース(女子)がいた。
「……あんな短時間でよく着替えられたなー。」
「ツッコミポイントそこなんだ。」
俺が部屋に入った瞬間のことを精密に話すとこうだ。
サンタクロースのコスプレをした雫が、笑顔で『メリークリスマスだよっ!』と言いながら、クラッカーを発砲した。
まあ、可愛いからいいんだけどね。
そのサンタのコスとかクラッカーとかは、まあ、いいんだけど。
「やるの、早過ぎない?」
まだ朝だぞ。
「わわわわっ!そう言えばそうだったっ!」
途端にわたわたと慌て始める雫。
「ちょ、ちょっと着替えてくるよ――――!」
そしてリビングを飛び出した。
うーん。久々に見たなぁ。
あいつの天然な姿。
可愛いなぁやっぱり。
……そもそも。
サンタのコス衣装なんてどこで手に入れたんだ?
…………まあ、気にしても仕方ないか。
というか考えたくない。
雫はすぐに戻ってきた。
失敗したせいか、頬を若干染めて俯いている。
「あ、あ、あ、朝ごはん、食べようか。」
食卓について、朝食を食べる。
鮭の塩焼き、卵焼き、ほうれん草のおひたし、人参とじゃが芋の煮物、冷奴、味噌汁、炊きたてのご飯。
うーん、相変わらず理想的な朝食だな。
ちょっとたんぱく質多めだな。
カルシウムがないか………。
まあ、それは後でとればいいとして。
高タンパク低カロリー、理想的だな。
それに味もいいし。
そんな最高水準の朝食を食べ終えて。
しばらくぐだーっと本を読んだりテレビを見たりしていた。
そして昼前。
「お兄ちゃん。お買い物に付き合ってもらっていい?」
「買い物?」
「うん………。」
「何の買い物だ?」
「えっと、晩御飯の材料、かな?」
「あれ?食材もう切れたのか?」
「えっと、そうじゃなくて……。」
と、雫はどこか申し訳なさそうに。
「今日の晩御飯、特別なの作りたいの。………ダメ?」
ああ、そうか。
クリスマスだもんな。
「よし。付き合ってやろう。感謝せよ。」
「あ、ありがとうお兄ちゃん!」
冗談で言ったのに、ツッコミが返ってくるどころか本気で感謝されてしまった。
うん、こいつやっぱり純粋すぎないか?
買い物ついでに、昼食は外で済ませた。
さて。
駅前にある大手スーパーで買い物だ。
雫はもう夕食の料理は決めているらしく、次々と食材を籠に放り込んでいく。
まあ、料理の内容が予想できてしまうので詳細は省こう。
それは無粋というものだろうしな。
後のお楽しみってやつだ。
食材の買い物を済ませた俺たちは、続いてケーキショップに向かった。
そこでケーキを受け取る。
……事前に予約してあったらしい。
手回しがいいよなホントに。
食材を俺、ケーキを雫が持って自宅に戻った。
しかし、本当に買い込んだな。
これ何キロあるんだ?人間を殴殺できるだろ。
家に戻ると、雫はまず冷蔵庫にケーキをしまい、すぐさま調理に取り掛かった。
「お兄ちゃん。私はこれからお料理始めるから。………えっと、一緒に遊べなくてごめんね。」
「いいよ。まあ、頑張ってね。」
別に謝ることでもないんだけど。
ま、そこを指摘しても無駄だろうし。
雫はこういう『特別な時』の料理は一人で作ろうとする傾向があるんだよな。
この間の合宿の時もそうだし。
だから、今日は雫に任せるしか、ないのだった。
手持ち無沙汰だった俺は、外に出ることにした。
ちょっとした買い物だ。
ククッ。
まあ、雫を驚かしてやろうという魂胆だが。
ここまで言えば俺が何を買いに出たのか分かるだろう。
雫へのクリスマスプレゼントだ。
今年も、今年は特に、頑張ってくれた雫に。
贈り物を。ご褒美を。
贈りたい。
さて。
何を買おうか。
雫は自分の欲しいものは俺に明かさないからな……。
俺を頼ったら申し訳ない、とか言って。
だから、予想してみるしかない。
本は……まあ、欲しくはあるのだろうけど。本当に欲しいもの、ってのとはちょっと違うだろう。
アニメのDVD……まあ、高いしな。でも本と同じ理由でとり合えず却下。
そういえば、この前雫がマフラーを失くしたとか……………輝大喜びのネタだな。いや、兄妹だから成立しないはず………!
じゃあマフラーを候補に………ああでも、もう買っちゃってるか?
うーむ………。
意外と難しいな、そういうの。
イヤリングとか……あいつそういうの全然つけないしなー。
化粧っ気もほとんどないし。
だとすると………服?
いや。サイズとかデザインとかあまり分からんぞ俺。
却下。
うーむ。
雫がこっそり隠している(つもりになっている)趣味の品を俺が買うと確実に『柊家の黄昏(ラグナロク)』が始まるだろうしなぁ………。
パソコンでも買ってやるか?いやあいつはもうノートパソコンを持ってるし……。
だとすると………。
ゲーム………ゲーム………ゲームねぇ。
ゲームか………………。
そうだな。
雫はまだ俺と遊びたがってるし。
最近の新しいパーティーゲームを、買ってやるか。
今日の買い物。
パーティーゲーム二本。
対戦ゲーム二本。
うん。まあこれでいいだろう。
ふと時計を見ると、いい時間だったので。
俺は、家に帰ることにした。
さて。家に戻ると、雫はまだ料理中だったので、これ幸いと部屋に戻り、念のため隠しておいた。
そのまま外出着から部屋着に着替え、リビングに向かうと。
「あ、お兄ちゃん。お帰り~。見て見て!どうだこの料理!」
テーブルには豪華な料理が並んでいた。
「おお……。」
師走。
December。
なんでもいいが、とにかく一年で最後の月である。
そして。
今日は。
聖夜。
即ち。
クリスマス。
………………。
さて。
今年のクリスマスは。ちょっと忙しかった。
今年のクリスマス、どうしようかなーと思ったら。
蓮華は『申し訳ありません。家の人と旅行に行くことになってしまいまして』だ、そうで。
ゆりは『家族旅行。ごめんね。』だそうだ。
他の連中もそんな感じで。
という訳で。
今年のクリスマスは、雫と過ごすことになった。
「お兄ちゃん!いつまで寝てるの?」
何か起こされた。
「そろそろ起きようよー。」
ゆさゆさゆさゆさ。
「ちょ、おま、やめ、待て待て待て………。」
寝起きの頭を揺さぶられて、ちょっと混乱する。
「おはよう、お兄ちゃん!」
目を開けた俺に、雫が満面の笑みで挨拶する。
「ああ………おはよう。」
何かすごい眩しい笑顔だな。
「今日はお兄ちゃん、ずっとお家にいてくれるんでしょ?」
「ああ。まあね。」
「ふふっ。二人っきりのクリスマスだねっ。」
ああ、そうか。
こいつ、それが嬉しいのか。
「まあとにかく、俺の上から降りろ。」
「う、うん。」
こいつはいつの間にか、マウントをとってやがった。
「あ、ごめんね。」
降りる雫。
「じゃ、朝ごはん用意してあるから、すぐに来てね~。」
と言って、雫は部屋から出て行った。
「ふぁぁあああ。」
欠伸をしつつベッドから降り、着替える。
部屋着に着替えて、リビングに行くと。
パァン!と、音がして。
「メリークリスマスだよっ!お兄ちゃんっ!」
サンタクロース(女子)がいた。
「……あんな短時間でよく着替えられたなー。」
「ツッコミポイントそこなんだ。」
俺が部屋に入った瞬間のことを精密に話すとこうだ。
サンタクロースのコスプレをした雫が、笑顔で『メリークリスマスだよっ!』と言いながら、クラッカーを発砲した。
まあ、可愛いからいいんだけどね。
そのサンタのコスとかクラッカーとかは、まあ、いいんだけど。
「やるの、早過ぎない?」
まだ朝だぞ。
「わわわわっ!そう言えばそうだったっ!」
途端にわたわたと慌て始める雫。
「ちょ、ちょっと着替えてくるよ――――!」
そしてリビングを飛び出した。
うーん。久々に見たなぁ。
あいつの天然な姿。
可愛いなぁやっぱり。
……そもそも。
サンタのコス衣装なんてどこで手に入れたんだ?
…………まあ、気にしても仕方ないか。
というか考えたくない。
雫はすぐに戻ってきた。
失敗したせいか、頬を若干染めて俯いている。
「あ、あ、あ、朝ごはん、食べようか。」
食卓について、朝食を食べる。
鮭の塩焼き、卵焼き、ほうれん草のおひたし、人参とじゃが芋の煮物、冷奴、味噌汁、炊きたてのご飯。
うーん、相変わらず理想的な朝食だな。
ちょっとたんぱく質多めだな。
カルシウムがないか………。
まあ、それは後でとればいいとして。
高タンパク低カロリー、理想的だな。
それに味もいいし。
そんな最高水準の朝食を食べ終えて。
しばらくぐだーっと本を読んだりテレビを見たりしていた。
そして昼前。
「お兄ちゃん。お買い物に付き合ってもらっていい?」
「買い物?」
「うん………。」
「何の買い物だ?」
「えっと、晩御飯の材料、かな?」
「あれ?食材もう切れたのか?」
「えっと、そうじゃなくて……。」
と、雫はどこか申し訳なさそうに。
「今日の晩御飯、特別なの作りたいの。………ダメ?」
ああ、そうか。
クリスマスだもんな。
「よし。付き合ってやろう。感謝せよ。」
「あ、ありがとうお兄ちゃん!」
冗談で言ったのに、ツッコミが返ってくるどころか本気で感謝されてしまった。
うん、こいつやっぱり純粋すぎないか?
買い物ついでに、昼食は外で済ませた。
さて。
駅前にある大手スーパーで買い物だ。
雫はもう夕食の料理は決めているらしく、次々と食材を籠に放り込んでいく。
まあ、料理の内容が予想できてしまうので詳細は省こう。
それは無粋というものだろうしな。
後のお楽しみってやつだ。
食材の買い物を済ませた俺たちは、続いてケーキショップに向かった。
そこでケーキを受け取る。
……事前に予約してあったらしい。
手回しがいいよなホントに。
食材を俺、ケーキを雫が持って自宅に戻った。
しかし、本当に買い込んだな。
これ何キロあるんだ?人間を殴殺できるだろ。
家に戻ると、雫はまず冷蔵庫にケーキをしまい、すぐさま調理に取り掛かった。
「お兄ちゃん。私はこれからお料理始めるから。………えっと、一緒に遊べなくてごめんね。」
「いいよ。まあ、頑張ってね。」
別に謝ることでもないんだけど。
ま、そこを指摘しても無駄だろうし。
雫はこういう『特別な時』の料理は一人で作ろうとする傾向があるんだよな。
この間の合宿の時もそうだし。
だから、今日は雫に任せるしか、ないのだった。
手持ち無沙汰だった俺は、外に出ることにした。
ちょっとした買い物だ。
ククッ。
まあ、雫を驚かしてやろうという魂胆だが。
ここまで言えば俺が何を買いに出たのか分かるだろう。
雫へのクリスマスプレゼントだ。
今年も、今年は特に、頑張ってくれた雫に。
贈り物を。ご褒美を。
贈りたい。
さて。
何を買おうか。
雫は自分の欲しいものは俺に明かさないからな……。
俺を頼ったら申し訳ない、とか言って。
だから、予想してみるしかない。
本は……まあ、欲しくはあるのだろうけど。本当に欲しいもの、ってのとはちょっと違うだろう。
アニメのDVD……まあ、高いしな。でも本と同じ理由でとり合えず却下。
そういえば、この前雫がマフラーを失くしたとか……………輝大喜びのネタだな。いや、兄妹だから成立しないはず………!
じゃあマフラーを候補に………ああでも、もう買っちゃってるか?
うーむ………。
意外と難しいな、そういうの。
イヤリングとか……あいつそういうの全然つけないしなー。
化粧っ気もほとんどないし。
だとすると………服?
いや。サイズとかデザインとかあまり分からんぞ俺。
却下。
うーむ。
雫がこっそり隠している(つもりになっている)趣味の品を俺が買うと確実に『柊家の黄昏(ラグナロク)』が始まるだろうしなぁ………。
パソコンでも買ってやるか?いやあいつはもうノートパソコンを持ってるし……。
だとすると………。
ゲーム………ゲーム………ゲームねぇ。
ゲームか………………。
そうだな。
雫はまだ俺と遊びたがってるし。
最近の新しいパーティーゲームを、買ってやるか。
今日の買い物。
パーティーゲーム二本。
対戦ゲーム二本。
うん。まあこれでいいだろう。
ふと時計を見ると、いい時間だったので。
俺は、家に帰ることにした。
さて。家に戻ると、雫はまだ料理中だったので、これ幸いと部屋に戻り、念のため隠しておいた。
そのまま外出着から部屋着に着替え、リビングに向かうと。
「あ、お兄ちゃん。お帰り~。見て見て!どうだこの料理!」
テーブルには豪華な料理が並んでいた。
「おお……。」
作品名:表と裏の狭間には 十話―柊家の年末年始― 作家名:零崎