【オリジナル】いじめ【俺は俺のもので、君のもの】
*遊紀が1年生の時の話
出会いといじめ
初めて女の子を怖いと思った。
いじめ
俺がそれを目撃したのは高校生になってから。5月。
もうだいたい女子はグループが出来上がってたり、男子もつるむ仲間は決まってたりして。
俺は大輝とつるんでいて、二人って少なくね?とか話してた。まあ俺らは二人でもよかったんだけど。気楽だから。
「あいつがもう一年早く生まれてたらねー」
「まあなー」
「無理ですが」
「ですよねー」
なんてことはない話をしつつ学校を探検していた。
普通の公立高校で偏差値はまあまあかな。
結構広いから迷わないようにということで放課後を使ってぐるりと回っていた。
「ここ人いなくね?」
「あーそうかも」
ここは…東館一階。一番奥。
空き教室がいくつもある。
放課後っていうこともあって人気はない。
黙って視線を巡らせているとガタッと派手な音がした。
「なんだ?」
「しっ!」
大輝が視線を一つの空き教室に向けている。
目を凝らすと女の子がたくさんいるように見えた。
『…よ!…あ…』
「聞こえねーな」
「ちょっとヒステリックじゃない?」
ちょっとした好奇心で、気付かれないぐらいにドアを開けて中を見る。
「俺なんかした!?」
一人だけ男子生徒がいるようだ。少し混乱しているらしい。
『――のこと酷く振ったっていうじゃない!』
『はあ!?』
『最低!』
『ちょっ!』
あ、男子が転んだ。
そこにつけ込むように蹴りが繰り出される。
「…まずくね?」
「完璧いじめだな…」
『ぐっ…!』
苦しそうな呻き声が聞こえてくる。
大輝は普通に傍観している。
ったく、
「ちょっといい?」
ガラッと目立つように音を立ててドアを開ける。
大輝はあっちゃーみたいな顔をしている。
『な、遊紀くん!?』
「え、誰?」
俺はなんだか名前を知られているらしい。なんで?俺、目立つようなことしてないけど。
『ちょ、ちょっと!行こう!』
「今後こーゆーことしたらわかってるよねー?」
大輝が最後さらっていった。
「なんか情報でも持ってんの?」
「女の子の情報はばっちりでーす」
ぱちんとウィンク
女の子受けしそうなしぐさだな。
「大丈夫か?」
床にうずくまっている男子に声をかけた。
震えている。
「…ぇ…!」
「え?」
「やっぱり女って怖え!!」
「は?」
うんまああんなに暴行受けてたらわかるけど。
なんか尋常じゃないくらい怯えてる。
「無理無理無理なんで女と付き合わなきゃいけないの?は?振ったら俺が悪いの?まじない!」
「ちょっと落ち着け」
体制を起こしてやって背中をさすってやる。
しばらくすると震えはおさまった。
「あ、ありがとな」
彼は弱弱しく笑った。
「お前女の子苦手なの?人生損してるっしょ」
「大輝!」
「ああ、お前らか…遊紀?と大輝?」
「…?」
「おんなじクラス」
「あ、そうか」
なーんか見たことあると思った。
椅子に座って話を聞くことにした。
「俺、浩介」
「あ、わかった。うん」
大輝も名前を聞いて分かったようだ。
「俺さ、なんか…小さいころから女の子苦手なんだよ。でもなんでだか告白とかされるし」
「顔がいいからだろ」
あっさりと大輝が言う。
確かに顔は整っている。今は少し傷とか汚れがついてるけど。
ハンドタオルを取り出して顔を拭いてやる。
「うお、あ、ありがと…」
「んでー?振ったら暴行?うわ、ちょっと怖いかも」
「だろ?あ、でもお前らのこともなんか言ってた」
「え?」
「なんで遊紀くんたちの好み教えてくれないの!とか。仲良くねぇし!」
「それはなんつーか…ごめん?」
「あはは、謝ることじゃねえって!」
「…うん。決めた」
「は?」
「え?」
決めた。今度会ったら言ってやろう。
「…とりあえず」
「お前相変わらず読めねー!」
「なに?電波?」
「俺、遊紀」
「うん?知ってるけど」
「こっちは大輝」
「うん…」
「今日から友達。よろしく」
「うん…ん!?」
「あ、なるほどー!よろしくな!浩介!」
「えええ?ついていけねー!」
「いつもこんなんだから気にするな」
「不安すぎるだろ」
今日のまとめ。
ダチが増えました。
「やっぱり電波…?」
「電波じゃねえよ。抜けてるだけで…たぶん」
「おい!」
「あ、あの時の…」
後日、新たに加わった浩介と三人で歩いてると浩介を苛めていた女達を見つけた。
『あ…!』
たぶんリーダー格であろう女の子に近づく。
「俺の好みは性格が可愛い子」
『え?』
「次はねえからな」
にっこりと笑顔を添えるとひぃっと悲鳴をあげて逃げていった。
「怒らせると怖いタイプ?」
「ああ…でも興味ないことにはとことん関わらない」
「ん?」
「お前のこと気に入ってるって意味だよ」
大輝が何か言ってる。
浩介は顔を赤くしている。
「なんなんだお前ら!たらしか!」
「え?」
「は?」
なにがなんだかわからないけど顔を赤くした浩介が可愛いので二人で頭をぐりぐりと撫でた。
そしたら耳まで赤くするんでからかい甲斐があるなーと思った。めでたし。
***
べつに浩介はもーほーじゃないです。
今は。
三人の中では浩介が一番身長低いかなあ
遊紀が一番でかい…といいなあ
いじめ、だめ!
作品名:【オリジナル】いじめ【俺は俺のもので、君のもの】 作家名:黒羽@pixiv