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ワンルーム☆パラダイス

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【付録2】先生とボク(少年篇)〜追憶のこーかん日記☆



+++

――ない! ないぞ!!
ひっくり返した風呂敷包みを探って少年は青ざめた。……なんたることだ、よりによっていちばん人に見られてはいけないものを教室の机の中にうっかり忘れてきてしまったらしい。
「……、」
……あれっ? いや待てよ、少年は袷の下で荒ぶる鼓動を手に抑え、数時間前の記憶を必死に手繰り寄せた。
こー、机に広げた風呂敷に荷物片そうとして、机の中からノート出して置いて、したらちょーどヅラが回って来てノート出せって、そんで、――ああ、つってなんかボーッと気ィ抜いてて、たまたまいちばん上にあったやつコレかって取って、そのとき知らずに重ねてホイッと……うわあぁぁぁぁぁ!!!!!
少年の全身から改めてザーッと血の気が引いた。心臓がありえない速さで脈を打つ。息をするのも苦しいくらいだ、ただでさえあっちゃこっちゃハネほーだいの天パを掻き毟って少年は身悶える。
――やっべぇェェェよォォォあれセンセに見られたらオレ確実に氏ぬるぅぅぅぅ!!!!!
「……。」
天パを引き毟っていた少年の手がぱたりと落ちた。すべてが虚しい、なんだか急に世界が儚く色褪せて見えた。……ああチクショー、どうせ氏ぬなら自分から正々堂々真っ向勝負、――先生! 俺とこーかん日記してください!! たとえ玉砕覚悟でも、正面切って訴えるべきだったのだ、それを俺というヤツは、勇気も持たず覚悟も持たず、あんな姑息な手段で薄ら寒いひとりエアこーかん日記なんかでソノ気になって、……ダメだ! どーせ氏ぬにしたってやっぱどーでもよくなんかなんねぇ! アレを回収してからでないと氏ぬに氏ねねーーー!!!
もはや手遅れかもしれないという恐れを振り払いつつ、少年は自室と同じ敷地内にある教室に駆け戻った。
まったく、すぐに気が付きゃよかったものを、授業終わって部屋戻って薪割りして水汲みしてしくだいの書き取り(晩飯前に先生に見せないとニッコリ笑って二千字追加の刑にされる)やんなきゃなーって、だらだらノート出しかけたところでうっかり爆睡こいてたせいで回収チャンスを無駄にした。
「……」
静まり返った教室の引き戸をそろりと開けて、と、そのとき、――ぽろりと、教卓の前に突っ立ってた誰かの手から何かが落ちた。
「!」
扉の陰にさっと身を隠して少年は目を見張った。――それオレの! エアこーかん日記ィィィィ!!!!!
(……!)
――てめぇ何さらしとんじゃぁぁぁ! いますぐ踏み込んでってアッチの政界に意識飛ぶまでタコ殴りにしてやろーかと思ったが、それより早く電光石火で向こうが教室を出て行ったので。幸いなことに少年はヒトとしてギリ道を踏み外さずにすんだ。
「……」
引き戸を開けて中に入った少年は天パの後ろ頭を掻いた。何か他の仕事が入って課題チェックが後回し、という展開に最後の望みを繋いだのであったが、提出ノートがこうして教卓に戻っているということは、もはやタイムアウトは明白である。床から拾い上げたノートの最終ページを、少年は恐る恐る開いてみた。
先生の認め印とともに、達筆の朱書きで何か文章が書いてある。――ああああやっぱりぃぃぃ、予期していたことではあったが少年は撥ねた天パの首をぐんにゃり垂れた。
「……、」
深く息を吐いて顔を上げ、気を取り直して文字を追う。
『両手でいろんな書体の字が書けるように練習しているんですね。いい脳のトレーニングになりますよ。飽きないようにひとりこーかん日記という体裁を取っているのも、面白いアイディアです。』
最後にこれでもかとぐるぐる花丸がしてあった。
「……。」
少年は閉じたノートを胸に抱き締め、小さな肩を震わせて声を出さずに静かに泣いた。
――違うんですよォォォ先生、コレはそーゆーアレじゃなくってェェェ、たしかにぃぃぃ、こーかん日記なのにズラズラ同じ筆跡じゃぁなぁーって、丸文字ギャル語とかなんちゃって草書体とかしっちゃかめっちゃか試行錯誤の末、そっか右と左で書き分ければいんじゃね? オレ天才!! そーだな、俺が左で先生が右にしとけばまだなんとかそれっぽく……、まっ、経過がどうあれ結果はどーせグダグダのこのてーたらくですしぃ、この際そーゆーコトにしといてくれちゃってもいーですけどぉぉぉ!!!
教室を出てトボトボ帰り道、職員室(という名の先生の自室)を覗いたら、ヅラが先生に向かって、何かを大真面目にに主張している最中だった。
(……。)
ああやっぱ、さっきの立ち読み野郎アイツだったか、……ま、あいつなら万が一明日教室で言いふらされたところでデムパだから、で片付けられるな、少年は固くエアこーかん日記を抱いた胸を、ひとまずほっと撫で下ろすのであった。


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