CROSS 第14話 『挨拶まわり』
第6章 大恥
少佐が目を覚ますと、そこは湖の岸辺だった……。
「あ、あれ?」
少佐が起き上がって周りを見てみると、レミリアや咲夜などが、呆
れ顔や笑い顔で立っていた……。パトカーや救急車も来ており、そ
の後ろにたくさんの野次馬がいた……。
「受け取って1時間もしないうちに、新車を廃車にするなんて、
500年生きてきてアンタが初めてよ……」
「普通、濃霧に巻きこまれたら、車を停めるでしょうに……」
レミリアと咲夜が口々に言った。少佐が湖のほうを見てみると、ち
ょうど少佐の車が湖から引き上げられるところだった……。その水
浸しになった車の上で、あの3人の妖精が乗っかって遊んでいた…
…。
「またあいつらのせいか!!!」
少佐は立ち上がって、その3人の妖精のところに行こうとした。
「ちょっと待ったぁ!!! あの霧を出したのは、レミリアさんで
すよ!!!」
テンションが高い黒髪の少女が少佐の前に立ち塞がった……。その
少女は、両手にカメラを持っていた。
「あなたは誰?」
少佐はまた新手かとうんざりとした口調で言った。
「『文々。新聞』の射命丸です!!! これは名刺です」
射命丸という少女は、手書きと思われる名刺を少佐に手渡した。
「何も喋る必要はないわよ!!!」
レミリアがそう言うと、咲夜が射命丸を無理やり後ろに下がらせた
……。
「レミリアさんがあの霧を出したんですか?」
少佐が怪訝そうにレミリアに言った。
「……ちょっと話したいことがあったからね。車が欲しけりゃ、ま
たあげるから、文句言わない!!!」
「……はい」
「そうだ。咲夜がアンタに聞きたいことがあるらしいわよ。今、あ
の天狗を押さえているところだから、私が代わりに聞くわね」
「何をですか?」
「ちょっと待って」
レミリアは、自分と少佐の周りに誰もいないことを確認すると、
小声で少佐に、
「さっき咲夜に渡したあの本のことよ」
「『異次元のすべて』という本のことですか?」
空気を察した少佐も小声で喋ることにした。
「……中を読んだの?」
「いいえ」
「……本当に?」
「本当ですよ。読む暇なんてありませんでしたよ」
「……なら、いいんだけど」
「……ヤバい本なんですか?」
「まぁ、そんな感じ」
「そうですか」
レミリアはそこで一安心だという様子を見せた。
作品名:CROSS 第14話 『挨拶まわり』 作家名:やまさん