小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

声の

INDEX|1ページ/1ページ|

 
空高く、雲は流れる。混ざることのない二つの色。昇りきった太陽には肌を、つんざく蝉の声には耳を痛めつけられる。いつのまにかそこに現れた黒い影は、悠々と僕の視界を横断した。絶望の色は過ぎ去ると、今度は風と破壊的な音。高い機械的な鐘の音は、すぐに金属の擦れる音と風の轟音に隠れ、視界の青も銀白色に潰される。
「――飛び込めば?」
 空耳に似た微かな声は、かき消されることなく僕の鼓膜を揺らす。
「……もう、遅いよ」
 僕は首を振り、喉を振るわす。作ることのできた音は、あの声に届いたのだろうか。
 再び聞こえだした鐘の音は、再び見えだした青へと吸い込まれ、そこには先となにも変わらぬ世界があった。静寂が現れて、僕らの道を開ける。僕らは促されるまま、その足を進める。


 ある夏の日の蝉の声がうるさいあの日、僕らは消えそうで消えられなかったけれど――
作品名:声の 作家名:きょう