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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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魔法使いと人間

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 なんという事だ。魔法使いの指導者になって、人間達を従属的な立場にしてやろうと考えていた僕自身が、人間だったのだ。

 このニュースは、魔法界をあっという間に駆け廻り、
 改革派を落胆させると共に、融和派をホッとさせた。

 一方、夢破れた僕は人間として楽しく生きる事を決意し、ジゴロになった。

 あまり売れていなかったとはいえ、
 なんとか48のメンバーだった母と、
 そんな芸能人をも籠絡した父の甘いマスクを受け継いだ僕は、
 モテモテだったのだ。

 そんな僕が25歳を迎えた時、突然忘れていた連中がやってきた。
 魔法省の役人達で、かなり慌てているようだった。

「あなたが関係を持った女性を全て、ここに書いて下さい」
 彼らはいきなりそう切り出したのだ。

 なんのことはない。
 僕には引き継がれなかった魔法の能力が、
 息子か娘に引き継がれたと言うのだろう。 

 僕は愉快になって思いだす限り、
 国籍も様々な300人余りの女性の名前を書いた。


「なんてことだ。海外まで・・・これではもう防げない」
 魔法省の役人達は頭を抱えてしまった。

「僕の子供達が増えてるのかい?」
 僕は笑いながら尋ねたが、彼らは笑っていなかった。

「そんな生易しい事ではありません!」


 聞いてみると、僕は魔法使いではないものの、
 特殊な魔法ウイルスを持っていて 
 それに感染すると、相手の人間が魔法使いになってしまうのだという。

 しかもこのウイルスは、年々感染力が強くなっていて、 
 今や、咳をしてもうつる可能性まで出て来たということらしかった。

 元々のキャリアーである僕だけは発症しないものの、
 普通の人間が次々発症しまくっているのだそうだ。

 「そういや、この頃ホウキで飛んでるやつが増えたな・・・」
 僕は役人を見送りながら、ボソっとつぶやいた。  


 僕の父、ハッシー・モットーが提唱し、
 僕自身がそれを推し進めようとした改革は、

 今やまったく必要のないものとなった。

 なぜなら、僕以外の人間全てが、魔法使いになってしまったからだ。

「あー空が飛びてえ・・・ 」
 僕はホウキに乗って飛びまわるサラリーマン達を見上げながら言った。


        (おしまい)