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仕事熱心

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(自爆するつもりなら奴はどうして二手に分かれたんだ?)手練の兵士は不可解なことを見逃さなかった。ロボットは人間と違って絶対に非論理的な行動は選択しない。もしかしてこの爆発こそが囮なのではないか。現にミサイルが爆発したのに船に余りにもダメージが無さ過ぎる。相手は総て計算していたのではないか。

 男の直感は当たっていた。だが少しだけ気づくのが遅かった。カダハ=Lは下半身だけで宇宙船の上部から進入していた。もうカダハ=Lに思考能力は無く、メインメモリが最後に与えたいくつかの命令を行使することしかできなかった。捨て身の策ではあったが、侵入者を仕留めてから船内にあるバックアップ装置でスペアボディに切り替えれば問題は無い。振動で何度も倒れこんでは器用に二本足で立ち上がり、転がりながら通路を移動する。ゲートを潜ると、メンテナンスルームとエレベーターで繋がった作業用のエリアにたどり着く。そして脚だけで培養機のスイッチを押して中身を船内に開放させようとする。

 しかしスイッチに脚を掛けた瞬間、エレベーターから這い上がってきた男がパルスライフルでカダハ=Lの脚の付け根を狙撃した。カダハ=Lは避けることもできずにもんどうり打って床になぎ倒される。

≪やっと捕まえた。危ないところだったぜ≫と男はさっきと同じ冷静な声で言う。鼓膜が破れていて自身にも声は聞こえなかった。

≪こんなものを船内に撒かれたら勝ち目は無かった。おいロボットさんよ、さっきは馬鹿にして悪かったな。お前は仕事熱心な奴だよ。とっても利口で、真面目で、頭が下がる。これは本当さ。でもお前は自分が毎日毎日、何をさせられていたか意味がわかっていないんだろうな≫

 男はロボットが動かないように下半身を右足で押さえ込む。ロボットは未だなお蛇のように脚を捻らせて抵抗していた。

≪お前はテロリストに命じられて最強毒素を排出するのボツリヌス菌をこの培養機でこさえていたんだ。そしてこの船から地球へせっせと毒を撒いていたのさ。だから俺がお前を破壊しに来た。俺はお前のことは嫌いじゃない。お前は命じられた事をしてただけでこんな目に遭う言われは無いのかもしれん≫

 しかし男は銃を構え、銃口とロボットの距離をゼロにする。

≪ただ、俺のほうがお前より少しだけ仕事熱心だっただけさ≫
作品名:仕事熱心 作家名:追試