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ぎんいろのあくま

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「ぼくたちの国は雪山で出来ていて、一年中雪が降っているんです。ぼたゆきみたいな雪が降って、ぼくたちの住む山に降り積もる。降り積もった雪はそのまま山の一部になって、山はその標高をましてゆく。ぼくたちに出来るこばとといえば降り積もる雪に埋もれないように山を登り、生活を守ってゆくことくらい。山で生まれたぼくたちは山を離れては生きてゆけないから。だから、こうやって山を登り続けるんです。」
「へえ。」
「でもいくつか注意しなければいけないことがあります。そのひとつが、雨。標高が一定まで達すると、雪が止んで雨が降り出すんです。ほら、そろそろだとおもっていたけどやっぱり。今日は雨だ。今回はどうやら赤い雨のようですね、きみの頭も赤く染まってきていますよ、きっとぼくも同じでしょう? 今日は赤い雨だけれど、この間は青で、たしかその前は透明だったかな。もし別の色の雨が見てみたかったら、また来てみてください。そうしてまた、ぼくたちと一緒に山を登りましょう。」
「ふうん。」
「それと、雨の後にはもうひとつ、注意しなければいけないことがあるんです。」
「なに?」
「銀色の悪魔。ぼくらの住むこの雪山は、標高の高さと気温の低さも相俟って、生物らしい生物は存在していません。本来、ぼくたちの命を脅かすようなものはいないんです。だけど、雨の後は違う。必ず、銀色の悪魔がやってきます。雨を吸った山を削り、ぼくたちの国を蹂躙していく。海面に太陽が反射したような輝く銀色の身体を持つ、背の長い姿の悪魔。全てを喰らい尽くすまで、その猛威は止まらない。誰にも、逃げ場なんてないんです。」
「そうなんだ。」
「危険ですよ。」
「へえ。ところでさ、」
「なに?」
「さっきから、なに、それ? 暑くて頭が沸いたの?」
「いんやー、カキ氷、擬人化。」

 そういってきみは、ペンギンの形のカキ氷機の下から出した氷の山に苺のシロップをかける。

「たべるだろ?」

 うん、と頷くと、苺のカキ氷が差し出される。いつもはカレーを食べるときに使う皿に入れているから、すごく量が多い。見ただけで頭がキーンとしてきた。

「はいどーぞ、これが噂の銀色の悪魔でーす。」

 差し出されたカレースプーンを受け取って、彼らの国を蹂躙。
 甘くて、美味しかった。
作品名:ぎんいろのあくま 作家名:末。